研究面での変遷循環器グループ川崎病、心筋症、先天性心疾患、精神運動発達と多岐にわたり研究を行っている。川崎病では、サイトカインが冠動脈瘤形成への関与を明らかにし、エピジェネティクスの関与も明らかにした。心筋緻密化障害の臨床遺伝学的研究とiPS細胞・遺伝子改変マウスを用いた病態解明研究を行ってきた。現在は、国内研究拠点として、全国より症例を集積し、精密医療を実現するために解析を行っている。孤立性右室低形成の病態解明研究を学会と連携して多機関共同研究として稼働している。先天性心疾患のFontan術後の病態解明研究では、リンパ管の新生と蛋白漏出性胃腸症に焦点を当て研究を進めている。神経グループ10万人の妊婦をリクルートした国内最大規模のコホート研究である「エコチル調査」に関わっており、富山ユニットセンターと共同で、妊娠中や出生した児の発酵食品摂取と子どもの神経発達との関連についての検討を行っている。内分泌グループ長森診療指導医を中心に,小児肥満の疫学研究や小児思春期発症Basedow病の病態解明に関する研究を行っている.また小児思春期発症1型糖尿病の診療体制確立のための基盤づくりを当院中心に行っていく予定としている.腎・膠原病グループ2024年度より新たなチームとして一歩を踏み出した、若いチームである。腎疾患や膠原病を慢性的に患う児では、原疾患の影響や治療に伴う負担から、しばしば心身に不調をきたすことが経験される。このような事例における心理社会的支援のあり方等の検討を行っている。当教室は、開学以来、初代教授岡田敏夫先生のもと、臨床における各専門分野を立ち上げ、1例1例を丁寧に診療することを伝統としてきた。1995年に宮脇利男先生が二代目教授として就任し、先天性免疫不全症の臨床ならびに基礎研究を中心に大きく飛躍してきた。2013年には、足立雄一が三代目教授となり、アレルギー疾患の疫学研究分野にも領域を広げ、2023年秋には4代目教授として今井千速先生が就任し、臨床・研究・教育におけるさらなる発展に向けて新たな富山大学小児科の道を歩みだしている。この間、入局者も徐々に増え、現在は大学学内に医局員が30人近く所属する大所帯となっている。研究に関して、各グループの活動は年々活発化しており、結果を残してきている。さらなる飛躍のため、医局内でも各グループの研究を共有し、理解を深め合う取り組みも進めている。血液・免疫グループ日本小児がん研究グループ(JCCG)の多施設共同臨床試験に参画し、小児の血液がん・固形がんにおける標準治療の開発に取り組んでいる。基礎研究としてはCAR-T細胞、CAR-NK細胞による難治性悪性腫瘍に対する新規治療の開発に取り組んでいる。 アレルギー・呼吸器グループ近年アレルギー疾患が急増している背景を探るべく、全国や地域での疫学調査を実施し、我が国における生活様式や大気汚染(黄砂、PM2.5や腸内細菌叢)がアレルギー疾患の発症や増悪にどのような影響を及ぼしているのかについて研究を行っている。また、アトピー性皮膚炎におけるdangersignalの果たす役割の解明を進めている。救急・集中治療グループ小児脳死下臓器提供に関する多くの課題について、全国の医師らと議論を続け、ガイドライン改訂などに関わるとともにこどもの命のあり方について、終末期医療、グリーフケア、教育との連携など多岐にわたって研究を進めている。また、県内のChildDeathReviewにおいて、大学としての役割を追及し、新たなモデル提案に向けて取り組んでいる。(種市尋宙、今井千速)78 小児科学講座
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