富山大学理学部案内2022
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 生物は不変ではなく時間とともに変化します。その変化には、ひとつの個体内で見られるプロセスすなわち形態形成と、もっと長い時間をかけておこるプロセスすなわち系統進化があります。しかし、生物学の視点はプロセスの記述だけではありません。なぜ変化するのか、その仕組みについて探究するのも生物学の大きなテーマです。生体構造学分野ではこれらの面について総合的に研究し、生物の多様性の理解を目指しています。当分野に在籍する教員は植物・動物の形態学、発生学、分類学、系統進化学の専門家ですので、分野の第一の看板は細胞以上のマクロなレベルの系統進化的研究だといえるでしょう。しかし、研究の分野はこれだけに留まりません。その他の研究テーマを見てみると、植物の染色体を扱ったり、昆虫が示す複雑な社会性の成因や、水棲動物の繁殖様式の実態、また遺伝子情報を用いて動物の系統関係や進化を研究している人もいます。人間の活動による生物の大量絶滅が危惧される中、21世紀を迎えた今、生物多様性の正しい認識が我々には益々必要となっています。当分野では生物多様性を広くそして深く学ぶべく、教員と学生がともに日夜努力しています。生体構造学分野 Structural Biology生体構造学実験野外実習 私たち人間や多くの動植物は、1個の受精卵から出発して、ある一定の姿・形を持った、多細胞から成る個体へと発生・成長します。動植物の個体を構成している細胞は、種々様々に分化して、それぞれ特定の役割を担っています。生体制御学分野では多種多様な細胞がどのようにまとまって個体として成り立っているのか、どのように協調しあっているのかについて多方面から研究し、理解しようと努めています。植物学を専攻する4名の教員はそれぞれ、細胞レベルと遺伝子レベルで成長のメカニズムや光合成や脂肪酸合成に関係する遺伝子の発現機構、葉・根などの器官分化を制御している遺伝子を解明しようとしています。動物学を専攻する6名の教員は形態学、生理学、生化学、分子生物学的手法を駆使しながら、光などの環境条件との関係、体内時計や睡眠制御機構、ホルモン作用を手がかりにして水・電解質代謝、脳ペプチドの役割などに関係する様々な調節機構について研究しています。生命科学の世紀になるといわれる21世紀には、今まで以上に多様な生理現象についての理解が求められるでしょう。当分野の教員一同は、次代を担う生物学を志す学生諸君と共に積極的な教育・研究活動を展開しています。生体制御学分野 Regulatory Biology生体制御学実験基礎生物学セミナー卒業論文発表会臨海実習ラボラトリー先輩からのメッセージ生物学科4年 富山大学生物学科では様々な分野に渡る講義や実習を通して多角的に生物学を学べます。まず、1年次では生物学セミナーが開講されています。この講義では実際に博物館施設を訪れます。そこで興味を持った生物に対する調べ学習やプレゼンの準備等グループワークを行い、最終的に教授や学友の前で発表します。2年次以降は専門的な講義に加え学生実験や野外実習も開講されています。学生実験では、各教授の研究テーマに沿った実験を行うことを通して生物を研究するための基本的な実験手法を学ぶことが出来ます。実験レポートの作成は大変ですが生物について考えながら実験を行うことはとても楽しいです。野外実習は海も山もある富山の豊かな自然を生かし、植物、昆虫、臨海について行われます。野外実習では立山にも登りますが、高山帯植物を観察しながら登った山頂からの眺望は絶景です。是非皆さんの目で確かめてみて下さい。4年次では研究室に配属されて本格的な研究が始まります。富山大学生物学科の教授の研究テーマは多分野に渡るため、きっとあなたの好奇心を擽るようなテーマが見つかります。あなたも富山大学生物学科で自分の疑問を自らの手で解き明かしてみませんか。大学院理工学教育部生物学専攻 修士課程1年 富山大学生物学科では、遺伝学や細胞学、生態学といった幅広い分野の研究がされており、学生である自分たちも日々それらに触れることができます。1年生では基礎生物や一般教養などを、2・3年生ではより専門的な生物を学び、4年生では各々研究室の下で卒業研究を行います。 これらを経て自分は現在、進化生態学をテーマとした研究室に所属しています。本研究室では主にシロアリ類を扱い、社会性昆虫の進化の道筋を明らかにするべく、研究に取り組んでいます。一般的には害虫として知られるシロアリですが、カースト間の分業によって構築される高度な社会システムは、多くの研究者を惹きつける研究対象となっています。研究室内では、学生ごとにさらに細かくテーマを決めていくので、皆さんの興味を刺激するテーマが必ず見つかると思いますよ。 大学での生物は、単なる講義だけに止まりません。特に研究活動が始まると、未知へと挑戦する楽しさを強く実感することができます。皆さんも本学科で数段ステップアップした生物に挑戦してみてはいかがでしょうか。もっと生物学科を知る →10学科紹介/生物学科

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