神経細胞のシナプスではたらく分子の遺伝子発現制御機構を解明

 富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)分子神経生物学研究室 菊池啓悦(元大学院医学薬学教育部博士後期課程、現薬剤師)、伊原大輔助教、田渕明子准教授らの研究グループは、シナプスではたらく分子Arc遺伝子の新しい発現制御機構を解明しました。Arcは、シナプスに集積し、グルタミン酸受容体の量を調節することにより、神経細胞のはたらきに関与する重要なタンパク質です。Arc遺伝子は、神経活動や脳由来神経栄養因子BDNF(brain-derived neurotrophic factor)により発現が上昇しますが、その制御機構の全容は明らかになっていません。研究グループは、Arc遺伝子の制御エレメントSARE(synaptic activity-responsive element)を介して、転写因子であるMKL2がその遺伝子発現誘導を引き起こしていることを発見しました。
 シナプスで働く重要分子の供給機構を解明した本研究成果は、学習・記憶などの高次脳機能の制御機構を理解する上で重要な発見であると考えられます。また、精神疾患などの神経疾患の病態解明や新薬開発につながるものと期待されます。
 本研究成果は Journal of Neurochemistry の2019年1月号に掲載されました。

プレスリリース [PDF, 279KB]