喫煙、糖尿病、骨粗しょう症で、歯の喪失リスクが増加

 富山大学地域連携推進機構地域医療保健支援部門は、 平成26年に富山県が実施した富山県認知症高齢者実態調査の追加分析を行い、高齢者の歯の喪失に関する新たな知見を得ました。

 富山県認知症高齢者実態調査の対象者は、県内の65歳以上の高齢者から0.5%無作為抽出された1537人のうち、同意の得られた1303人(同意率84.8%)です。そのうち、今回の研究では、残存歯のない(歯を完全喪失した)275人と残存歯がある898人の合計1173人を対象に、残存歯の有無と、教育歴や生活習慣病等との関連性を評価しました。敦賀市立看護大学の中堀伸枝助教、富山大学の関根道和教授らが分析しました。

 その結果、喫煙、糖尿病、骨粗しょう症は、歯の喪失リスクを増加させることが分かりました。また、短い教育歴や肉体労働の職歴も、歯の喪失リスクが高いことが分かりました。

 歯の喪失は、噛む力が弱まることで少食や偏食などによる栄養不良の原因となります。その結果、筋力が低下するなど虚弱になりやすく、高齢期における生活の質(QOL)を低下させます。今回の研究結果から、歯の喪失を予防して高齢期を健やかに過ごすためには、小児期から高齢期までの一生涯にわたる分野横断的で総合的な対策が重要であることが分かりました。

 調査結果の詳細は、6月4日に英国の医学誌BMC Public Healthに掲載されました。高齢者の歯の喪失原因を包括的に評価した貴重な研究と考えています。

プレスリリース [PDF, 325KB]