ナノスケールのpHセンサーを開発し、がん細胞表面のpHイメージングに成功
金沢大学ナノ生命科学研究所のYuri Korchev教授、髙橋康史准教授、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのYanjun Zhang博士、富山大学薬学部の酒井秀紀教授、藤井拓人助教の国際共同研究グループは、ナノスケールのpHセンサーを独自に開発し、胃酸放出細胞やがん細胞表面でのナノスケールのpHイメージングに成功しました。
生体内の細胞は、細胞固有の細胞外微小環境(※1)に取り囲まれており、細胞が生きていく上では、この細胞外微小環境を中性に保つことが必要です。細胞内で腫瘍や炎症が生じると細胞外微小環境が酸性化するなど、pHの異常はさまざまな疾患につながることから、細胞外微小環境での細胞外pH(pHe)の測定は細胞の機能調整とpHの関係の理解につながります。しかし、これまで一般的に用いられているpHプローブでは、分解能や反応速度などの課題があり、pHeの定量化が困難でした。
本国際共同研究グループは、pH感受性の膜をナノスケールのガラスピペットに修飾したナノピペット型pHセンサーを独自開発し、pHeを単一細胞レベルかつ非標識でイメージングすることに成功しました。
本研究成果は、がんの診断および酸性環境の評価に役立つと期待されます。
本研究成果は、2019年12月6日10時(英国時間)に英国科学誌『Nature Communications』のオンライン版に掲載されました。