和漢薬研究を健康長寿に活かす~認知機能向上と抗ストレス作用を示す生薬エキスの臨床研究

 富山大学では機能強化研究プロジェクトの一つとして、「漢方薬による認知症予防への取り組みと地域活性化」を進めています。このプロジェクトでは、神経回路再構築活性を有する和漢薬に関する基礎研究の成果に基づき、和漢薬・漢方薬による、認知症をはじめとした高齢者疾患の予防と治療により、“健康長寿社会の形成に貢献する”ことを目指し、薬理学研究、生薬学研究、臨床研究を進めています。

 富山大学・和漢医薬学総合研究所のこれまでの研究で、生薬の骨砕補(こつさいほ)の水エキス、エゾウコギ葉の水エキスそれぞれが、アルツハイマー病モデルマウスや正常なマウスの記憶能力を向上させることを見出し、その活性成分やメカニズムについても明らかにしてきました。今回、この2種類のエキスを合わせた合剤を服用しての臨床研究を、ランダム化二重盲検試験により実施したところ、健常人の認知機能の一部が向上するとともにストレスに対する効果も認められるという成果が得られました。

 この研究は、富山大学・和漢医薬学総合研究所・神経機能学分野の東田千尋(教授)、久保山友晴(助教)、楊熙蒙(特命助教)、金沢大学・国際基幹教育院・松井三枝(教授)、稲田祐奈(研究員)、富山大学・医学部・和漢診療科の渡り英俊(助教)、金原嘉之(医師)のグループにより行われました。

 骨砕補水エキスとエゾウコギ葉水エキスを合わせて製剤化し、43歳から79歳までの健常人に対して12週間の投与を行い、服用前後の認知機能検査、ストレス抵抗性、および血液検査を実施しました。試験は、プラセボを用いたランダム化二重盲検法により行われました。RBANSという認知試験を評価するスコア結果では、エキス投与群で、記憶能力や、言葉の流暢性に関して向上が見られました。またストレス反応では、エキス投与群では、投与前と比べて不安や不確実感が緩和されました。

 これらの成果は、学術雑誌 Nutrients において公開されました(公開日 2020年1月23日)。

プレスリリース [PDF, 211KB]