高齢者の難聴は心臓血管疾患や短い教育歴でリスクが増加

富山大学地域連携推進機構地域医療保健支援部門は、平成26年に富山県が実施した富山県認知症高齢者実態調査の追加分析を行い、高齢者の難聴は心臓血管疾患や短い教育歴でリスクが増加することを明らかにしました。

富山県認知症高齢者実態調査の対象者は、県内の65歳以上の高齢者から0.5%無作為抽出された1537人のうち、同意の得られた1303人(同意率84.8%)です。今回の分析では、不完全回答および認知症のある人を除いた1039名を対象に、難聴の有無と、生活習慣病や社会経済的要因(教育歴)との関連性を評価しました。敦賀市立看護大学の中堀伸枝講師、富山大学の関根道和教授らが分析しました。

その結果、対象者のうち126人(12.1%)に難聴がありました。また、心臓血管疾患(狭心症・心筋梗塞)の既往のある人や教育歴が短い人で、難聴のリスクが増加することが分かりました。

高齢者の難聴は「生活上の不便」だけではなく、他人との交流を避けて家に閉じこもる原因となることや、認知症発症や死亡率を上昇させることが知られています。補聴器等の使用により症状は改善しますが、根治的な治療法がないことから、予防が重要となります。

今回の研究結果から、難聴を予防して高齢期を健やかに過ごすためには、若年期における十分な教育機会の確保や成人期における心臓血管疾患の予防など、小児期から高齢期の一生涯にわたる総合的な対策が重要であることが分かりました。

調査結果の詳細は、8月5日に英国の老年医学誌BMC Geriatricsに掲載されました。

プレスリリース [PDF, 269KB]