平成18年度学位記授与式 告辞

平成18年度学位記授与式風景

告辞

いま、五福、杉谷キャンパスを取り巻く立山連峰が光を浴び、神通川の水温む春の到来と共に、皆さんの門出の日がやってまいりました。本日の学位記授与式のため、ご多忙にも関わらずご臨席を賜ったご来賓をはじめ、本学ゆかりの皆様方に厚くお礼を申し上げます。只今、学部卒業生1,710名、大学院修士課程修了生343名、博士課程修了生52名、そして論文博士2名の合計2107名に学位記を授与致しました。

まず富山大学を代表して、学位記を授与された皆さんにお祝いを申し上げます。大変おめでとうございます。また今日のこの日を心待ちにしてこられたご家族の皆様に、衷心よりお喜びを申し上げます。

平成17年10月、県内三つの国立大学の再編・統合により、新大学が発足してから1年半を経て、ようやく学部、大学院の卒業生が一同に会する「合同卒業式」を挙行することができました。また、ご家族の式典への出席も実現できました。卒業されるお子様の晴れ姿をご覧いただけたでしょうか。

私はこの合同卒業式の機会を利用して、新大学最初の卒業生、並びに本日ご列席の皆様に統合後の本学の動きと目指すべき方向についてお話したいと思います。

一年半前、私は三つの基本方向をお示ししました。教育面では教育システムを高度化し教育の質の向上に努めること、研究面では先端的な研究成果を富山平野から世界に発信すること、そして社会貢献面では地域づくりを先導すること、の以上三点です。

私は、21世紀における大学の最も重要な使命は、教育、つまり創造的な人材を育成することにあると思っております。特に、いわゆる知識の陳腐化が進展する昨今、社会変化に呼応した教育方法の改善が不可欠だと考えております。現在、三つのキャンパス、8学部に分散する全学生が質の高い共通教育を平等に受けられるように、教育システムの高度化に関する話し合いが進展しております。本日卒業される皆さんは残念ながら、新しいカリキュラムの授業を受講できませんでしたが、後輩たちのために、自らの経験を通して忌憚のないご意見を寄せていただきたい。教育改革は本学が人材育成に取り組むための第一の優先課題と位置づけております。

新大学は旧大学の研究成果やその手法を引き継ぎ、様々な分野で活発な研究活動を展開しています。ごく最近の出来事では、3月14日富山大学水素同位体科学研究センターは、核融合科学研究所と核融合発電研究に関する連携・協力協定を締結いたしました。今年、私たちは例年なら雪の多いはずの富山で、雪のない冬を過ごし炭酸ガス増加による地球温暖化の不気味さを体験しました。本学の水素同位体科学研究センターのトリチウム研究の成果は、海に無尽蔵に存在する重水素を燃料とする核融合発電に不可欠であり、今世紀のエネルギー・環境問題の解決を左右すると云われております。まさに、世界でオンリーワンの研究と云えます。また、旧富山医科薬科大学時代に開始された21世紀COEプログラムの中間評価が発表されました。この大型研究は東洋医学と西洋医学の融合を目指すものですが、Aランクの評価を得て、本学の大学院教育や研究の水準の高さを内外に印象づけました。現在、ポストCOE研究プロジェクトの応募・採択に向けて新たな取り組みが始まっております。この分野に進学する卒業生の皆さんの今後の活躍を期待します。

社会貢献でも富山県、銀行・信用金庫と数多くの包括連携協定を締結し、8学部と和漢医薬学総合研究所、附属病院がそれぞれの専門分野を活かした地域活性化プロジェクトや医療福祉、教育活動等を幅広く展開しています。特に、8つの学部の同窓会の連携の話し合いが大詰めを迎えており、今年の秋に約8万人を越す同窓生の連合組織が発足する予定です。

さらに、新大学のシンボルの整備も進展しています。すでにロゴマークが公募・決定され、私の背後に示されているように、広く使用されていることはご存知のとおりです。この度、富山大学の校歌、つまり学歌が決定されました。この学位記授与式のあと、入選者の表彰と富山大学合唱団及びコーラス部によりお披露目がございます。このため、作詞された南 英市様は滋賀県から、作曲された江村玲子様は遠くドイツからお見えになっています。

今話しましたように、この一年半の間、教育改革や研究成果の発信、社会貢献と学章、学歌の制定を進めてきました。しかし、新大学はまだまだ発展途上にあります。私は卒業生や地域の皆様の支援を得て、素晴らしい中核的な総合大学を築き上げる決意です。

最後に、学歌の制定にちなみ、私は皆さんの門出をお祝いして、大伴家持の歌一首を贈りたいと思います。歌の解説は全く邪道と思いますが、大伴家持は今日の県知事にあたる越中国司として天平18年、746年から富山に滞在した5年間に、立山連峰など越中を詠んだ220首の歌を万葉集に残しています。この歌は冷気残る春の朝方、起き上がれずに寝床の暖かさの中でまどろんでいると、早起きの船頭の明るく力強い歌声が川面を伝って聞こえてきたという内容です。二度詠みますから、最初に歌の内容を、二度目には1200年の時空を超えた、万葉人のエネルギーと皆さんが学んだキャンパスで、果てしなく未来に続く、大地の息づかいを汲み取って下さい。

朝床に 聞けば遥(はる)けし 射水川 朝漕ぎしつつ 唱う舟人

卒業生の皆さん、広い視野をもち、責任ある社会人として健康に留意して自ら道を切り開き、歩んで下さい。新富山大学も皆さんと共に21世紀の明るい未来の構築に務めます。おめでとうございます。

平成19年3月23日
富山大学長 西頭 德三