平成20年度入学式 式辞

平成20年度入学式風景

式辞

本日、富山大学は、学部入学生と大学院入学生とが一堂に会する、第二回目の「合同入学式」を挙行することができました。この入学式には、学部入学生1,852名、編入学生90名、大学院入学生421名の総勢2,363名が列席されています。そして、この中には、65%に相当する約1500名の富山県外からの入学者と89名の留学生がいらっしゃいます。
私たち教職員一同は、ご来賓の方々と共に、皆さんの入学を心待ちにしていました。まず、富山大学を代表してお祝いの言葉を送ります。入学おめでとう。ご家族の方にも心からお喜び申し上げます。また、県外からの入学生や留学生の皆さん、富山の地によくいらっしゃいました。
特に、学部入学生の皆さんは、厳しい学力試験などを通して、意欲ある学生として入学を許可されました。今、口では言い表せない開放感に浸っていることでしょう。志望学部に合格したときのあの感激を忘れずに、4年後に大学生活の成果をしっかりと手にしてください。
私は学部及び大学院を問わず、本日入学された皆さんに対して、本学で最も身に付けてほしいことがらの一端を述べて、式辞とします。

まず、近年の大学をめぐる教育研究環境の概要からはじめます。皆さんが誕生された平成元年頃、わが国経済はバブルの崩壊で大不況に見舞われました。この期間は、「失われた10年」とも呼ばれ、学生の就職がままならない状態が続きました。平成7年に、政府は『科学技術基本法』を制定して、科学技術立国を宣言しました。つまり、資源の乏しい日本は「知恵」で生きていくしかない、と学術研究とそのための人材の育成を重視する姿勢を打ち出したのです。
この科学技術政策のポイントは「選択と集中」であり、今後発展の可能性の高い分野を選択し、重点的に研究費を投入することです。そして、平成17年度までの10年間に、41兆円の巨額が投じられました。現在、第三期基本計画が進行中ですが、さらに25兆円を投入して、絶えざる「イノベーション」により、経済がグローバル化する中で、日本経済が勝ち残れるように変革するというものです。これが今日の大学をめぐる教育研究環境の流れです。
皆さんも、恐らく一度ならず、「イノベーション」という言葉を目にしたことがあると思います。この経済用語は「技術革新」と訳されているため、モノの生産に関わる技術進歩をイメージしがちですが、これは狭い意味での理解です。広義では、この言葉は新しい「知恵」や「真理」の発見により、社会全体の仕組みを根底から変革することです。つまり、イノベーションが生まれるかどうかは、新たな真理が発見できるかどうかにかかっているのです。

かつて、私はある高名な科学者の次のような発言を聞いたことがあります。その科学者は「あなたの世界的な発見のきっかけは何だったか」と問われて、しばらく考えた後、「それはひらめき、あるいは第六感のようなものだ」と答えていました。この時、私はこの答えの中に、新しい真理の発見のメカニズムみたいなものが凝縮されているように思いました。同時に、大学教員が教育の場でこのような発見のメカニズムを教えられるか、という強い疑念を抱きました。この時までの私の教育経験からすると、「ひらめき」という、高度に研ぎ澄まされた精神的な一瞬の作用を教えられないと思ったからです。現在でもこの考えは全く変わっていません。
真理発見のメカニズムは、皆さんが自ら学びとり、磨き上げていくものです。そして、この能力を高める唯一の方法は、皆さん自身が主体的に議論を重ねることです。しかも、この議論の場では、「教員」対「学生」という上下意識があってはならないのです。あくまでも自由闊達に徹底的に議論することです。この議論の場で大学教員ができることは、それまでに発見された知恵や真理を総合し体系化して教えること、そして議論に加わりながら、その流れを整理することぐらいです。補助的な役割のみです。なぜなら、いかに教育熱心な教員であっても、皆さんの頭脳の中の思考回路にまで入り込めないからです。
このことは、学部で卒業論文を書いた大学院生の皆さんに賛同してもらえると思います。大学教育の究極的な目標は、このような創造的な人材を生み出すことです。単に体系的な知識を教えることではありません。科学が早いテンポで発展する社会では、知識も早く陳腐化します。ところが、大学時代に身に付けた発見のメカニズムに関する能力は永遠に陳腐化しません。将来いかなる職業につこうとも、大きな能力を発揮し続けます。皆さんは先生方に積極的に議論を挑み、同時に、議論し合える友人を作ってください。友人も一生の財産です。これが本日皆さんに最も申し上げたかったことです。

最後に、特に県外から入学された皆さんに申します。富山県は東西と南の三方を標高三千メートルの日本アルプス・立山連峰につづく山並みに囲まれ、北方に水深千メートルの富山湾が開けた自然豊かなところです。このような地理的特色を「世界でも稀有な高度差4千メートルのダイナミックな地形」として、「地球環境縮図モデル」と呼ばれています。つまり、富山大学は、今日の地球温暖化問題を体系的・総合的に教育研究できる最適地に位置しています。もちろん、このような特色は身近で多様なスポーツが楽しめる場を提供してくれます。夏は登山やヨット、冬はスキーなど多様な課外活動が可能です。富山は皆さんの学生生活を決して裏切らないと思います。
本学の教職員一同は、学部生や大学院生と共に素晴らしい富山大学を築きたいと願っています。この豊かな風土で学生生活を満喫してください。重ねてお祝い申し上げます。

平成20年4月8日
富山大学長 西頭 德三