平成20年度9月期 学位記授与式 告辞

平成20年度9月 学位記授与式 告辞

告辞

例年になく暑い夏が過ぎて、立山連峰の紅葉の便りを耳にする季節になりました。
本日、平成20年9月26日、富山大学秋季学位記授与式を迎えることができました。皆さんの門出を祝福するため、ご多忙の中ご臨席を賜った理事、学部長をはじめ、指導された教職員各位に厚くお礼を申し上げます。
只今、学部卒業生9名、大学院修士課程修了生6名、博士課程修了生11名、論文博士5名の合計31名に学位記を授与致しました。まず、富山大学を代表して、学位記を授与された卒業生・修了生、そして博士論文審査合格者の皆さんにお祝いを申し上げます。また、この日を心待ちにしてこられたご家族に心よりお喜びを申し上げます。

そこで、私は、本日学位記を受けられた皆さんに、是非心がけてほしいことをごく簡潔に述べて、お祝いの言葉にしたいと思います。
それは、今春3月21日の学位記授与式でも述べたことですが、「社会の日々の動きを自分の目でしっかり確かめて、常に、その社会現象の意味を考えて、自ら行動してほしい」ということです。
このようなことを云う背景には、私たちにとって、社会の動きが見えにくくなり、その意味も理解し難くなっているという現実があります。私なりに、この原因は「経済の巨大化・グローバル化」にあると考えています。ちなみに、グローバル化のメリットは、世界中のあらゆる食料品や商品を格安で買うことができ、世界各地に旅行できるようになったことなど数多くあります。ところがその反面、私たちの身の回りで起きる出来事は突発的で、しかも因果関係がはっきりせず、非常に危険であり、処理方法が曖昧で、その後の展開方向も予測できなくなりつつあります。これは大変大きなデメリットです。

現在の身近な事例について述べましょう。それは事故米の転売問題です。富山大学の附属学校園でも被害が発生しました。もちろん、食品でない事故米を販売した者の良心が厳しく問われることは当然です。しかし、それを未然に防止できなかった、私たちが身をゆだねている社会・行政システムのあり方も根底から問い直さなくてはなりません。
これに類するもうひとつの典型的な事例は環境問題です。約40年前の1972年に刊行されたローマクラブの報告書『成長への限界』にはじまり、2002年の第3作『成長の限界、人類の選択』では、2000年時点で、すでに地球の扶養力を20%も越えたとして、11のシナリオを示しています。この第3作目の報告書から5年が過ぎていますが、私たち一人ひとりは環境問題、特に地球温暖化に対して積極的な行動を起こしたでしょうか。この報告書にある「科学者が問題を提起し、政治が動き、消費者が行動して、各国の連携の輪が広がらな ければならない」という警告が無視されていると思わざるを得ません。

本日、学位記を受けられた皆さんは、立派な研究成果を手にされた科学者の一人であると同時に、一市民であり、一消費者です。今日も、また将来においても、経済の巨大化、及びグローバル化の大波を止められません。
実に僭越ながら、私はこの春に卒業された2,173名の皆さんに申し上げたと同様な、「社会の日々の動きを自分の目でしっかり確かめて、常に、その社会現象の意味を考えて自ら行動してほしい」という言葉を贈り、祝辞といたします。
健康に留意されて、本学で学んだことを最大限に生かし、あなた方自身の個性ある人生を築いていってほしいと願っています。富山大学の教職員一同は皆さんを応援していきます。ご卒業、大変おめでとうございます。

平成20年9月26日
富山大学長 西頭 德三