平成20年度学位記授与式 告辞

平成20年度 学位記授与式 告辞

告辞

標高3,000メートルの立山連峰から水深1,000メートルの日本海に至る富山のダイナミックな大自然は、まさに早春の光に包まれて、喜びに満ちています。新しい富山大学は、4回目の学位記授与式を迎えることができました。本日、皆さんの門出を祝福するため、ご多忙にも関わらずご臨席を賜った、来賓の方々をはじめ、本学ゆかりの皆様方に厚くお礼を申し上げます。

只今、学部卒業生1,717名、大学院修士課程修了生359名、博士課程修了生53名、論文博士4名、そして、高岡短期大学部専攻科修了生40名の合計2,173名に学位記を授与致しました。この中には、88名の外国人留学生もいらっしゃいます。まず、富山大学を代表して、2,173名の卒業生・修了生の皆さんにお祝いを申し上げます。大変おめでとうございます。特に、留学生の皆さんの学びへの情熱、そして今日までの努力に対して敬意を表したいと思います。また、この日を心待ちにしてこられたご家族の皆様にも、心よりお喜びを申し上げます。

本日の学位記授与式では、特に次の2点を申し添えさせていただきます。今回の学部卒業生の入学は統合前の平成17年4月であり、旧富山大学と旧富山医科薬科大学に入学された最後の卒業生となります。また、教育学部、高岡短期大学部専攻科でも最後の卒業生となります。

本日、卒業、修了された2,173名の皆さんは、本学の7つの学部及び専攻科で人文科学、社会科学、自然科学、芸術分野について学ばれたことに対して学士の学位又は修了証書が授与され、さらに大学院でより専門的な課題に取り組んだことに対して、修士又は博士の学位が授与されました。私は近年の地域社会の動向を見るにつけ、皆さんが本学で学んだ研究手法や研究成果を地域社会の再構築や発展のために、是非活かしてほしいと切に願っています。その理由の一端を述べて、皆さんへの門出の言葉といたします。

21世紀に入って早くも9年目を迎えて、科学技術はますます発展し、私たちの社会に大きな影響を及ぼしています。ちなみに、近年私たちの日常生活を根底から変化させたものに、世界中の誰とでも瞬時に情報交換できるインターネットや携帯電話の普及があります。このことは一般の人たちにとっては数十年前には予想もできなかったことです。また、医療技術の発展や優れた医薬品の開発により寿命が飛躍的に延びました。今日の日常生活で、このような事例は枚挙にいとまがありません。

ところが、科学技術があまりにも急速に進展したため、社会の中で様々な軋轢を生んでいます。最も卑近な例を挙げると、情報機器が犯罪に悪用され、社会的なモラルの低下に結びつくというマイナス面も現れています。もちろん、これは情報技術そのものに問題があるわけではなく、社会的・法的な犯罪防止システムの立ち遅れに原因があります。

さらに深刻な問題は地域社会の急激な構造変化によって、科学技術の発展の恩恵を等しく享受できないという地域内、地域間格差が発生していることです。ちなみに、過疎化や高齢化、医師不足により、地域間で医療・福祉格差が拡大しています。また、産業の空洞化や失業者の増加により、所得格差が拡大し、教育格差も発生しています。

21世紀の社会では、科学技術は社会の隅々にまで浸透し、私たちの日常生活にこれまで以上のベネフィットをもたらしてくれるに違いありません。ところが同時に、多種多様なリスクの発生も覚悟しなくてはなりません。特に私たちのメンタルな側面への様々な悪影響が懸念されます。したがって、科学技術の普及・応用にあたっては、第一に、事前にリスクの発生を予測し、最低限に押さえ込むことが必要です。第二に、地域内や地域間で発生している種々の格差を未然に防止しなくてはなりません。これからは科学技術の光の部分をいかに享受するかということよりも、その影の部分をどうコントロールするかが大変重要になってくると思われます。

特に大学院などで科学技術の発展に直接、携わる皆さんは、研究室にこもることなく、現実の社会に目を向けて、その実態を正確に把握すると共に、その変化を予測する能力を身につけてほしいと思います。つまり、21世紀社会では、これまで以上に自分の研究の社会での位置づけ、社会に対して将来与えるかもしれない影響を常に考えなくてはなりません。

これから皆さんが巣立ち、活躍される地域社会には、すでに指摘したような医療・福祉格差、所得格差、教育格差など、多様でかつ錯綜した課題が山積しています。その意味では、地域社会は待ったなしの状況に追い込まれています。これらの複合的な課題を解決するためには、皆さんの若い力と本学で学ばれた人文学、教育学、経済学、理学、医学、薬学、工学、芸術分野での研究手法や研究成果を総動員する必要があります。

本日卒業される2,173名の皆さんの中には、直ちに就職し社会で活躍する人、大学院に進学する人、また外国の大学に留学する人など、進路は様々であろうと思います。いずれの方向に進もうとも、健康に留意して、個性ある豊かな人生を築いてください。富山大学の教職員一同は皆さんを応援していきます。

本日のご卒業、大変おめでとうございます。

平成21年3月23日
富山大学長 西頭 德三