平成21年度入学式 式辞

平成21年度入学式風景

式辞

本日、富山大学は、統合後、第四回目の入学式を挙行することができました。本日は、学部入学生1,843名、学部編入学生及び政府派遣留学生103名、大学院修士課程413名、博士課程入学生62名の総勢2,421名が列席されています。本学の教職員一同は、ご来賓の方々や皆さんの先輩と共に、この日を心待ちにしていました。まず、富山大学を代表してお祝いの言葉を送ります。ご入学おめでとうございます。ご家族の方々にも心よりお喜び申し上げます。

私は本日入学された皆さんに是非、富山大学で学んでほしいことの一端を述べて、式辞といたします。

まず、学部入学生の皆さんに述べます。皆さんは大変厳しい学力試験などを通して、意欲ある学生として本学に入学を許可されました。今まさに満開の桜のもと、口では言い表せない大きな開放感に浸(ひた)っていることでしょう。もちろん、志望学部に合格したときのあの強烈な感激を忘れず、4年後にそれぞれの学部の専門的な学識をしっかりと手にしてほしいのですが、私はそれだけに留まってほしくはありません。それは専門学部在学中に「教養」を大切にするよう心掛けてほしいのです。

人間は一人孤立して生きていません。誰もが社会的な存在として生きています。教養はよりよく生きるための「判断力」と「行動力」を与えてくれます。本物の教養は「知識」と「思考」、そして「体験」が相俟って身につくものです。一般的に、「あの人は教養がある」という時、往々にして「物知り」であることや「博識」なことを意味します。ところが、教養人としての判断力や行動力を身につけるには、学習により「知識」を獲得するだけでは駄目です。日ごろの個人的な付き合いや部活動、キャリア教育、アルバイト、そして国内、海外旅行など社会的な交流を通じて自ら考え、自ら体験して、単なる知識でない本当の教養を身につける必要があります。

新入生の皆さんは今後、専門科目ばかりでなく、教養科目を学ぶことになっています。しかし残念ながら、大学における教養教育では時間的な制約から、いわゆる「知識」を身に付けることで精一杯です。その意味で、大学の教養教育は教養を身につけるための一つのきっかけに過ぎないのです。学部入学生の皆さんは、人生で最も感性豊かな,これからの4年間を通じて、大学で学んだ「知識」をもとに、よく「思考」し、様々な社会的活動を「体験」することで、教養人としての「判断力」と「行動力」を身につけてほしいのです。敢えていうならば、「偉大なる常識人」になるよう務めて下さい。

次に、研究の道を選び大学院の修士課程、博士課程に進学された皆さんに述べます。20世紀における近代科学は、専門化・細分化・単純化の道を歩みながら急速に発展したと云われています。とはいえ、皆さんの専門分野や研究テーマは、全体のほんの一部分に過ぎないことを自覚し、狭い専門領域におぼれることなく、積極的に他分野に関心を抱いて欲しいと思います。加えて、他分野に関心を抱くだけではなく、さらにそれを一歩進めて、科学と一般社会の関係に眼を向けてほしいのです。

私は、半月前の3月23日に行われた学位記授与式でも同様な趣旨を述べましたが、これからの21世紀において研究活動に携わる皆さんは、自分の研究の社会での位置づけ、社会に対して将来与えるかもしれない影響を真摯に考えなくてはいけないのです。皆さんには研究者であると同時に、一社会人であることの自覚をもってほしいと思います。

最後に、皆さんの研究フィールドや課外活動の場について触れておきます。皆さんは、「これは川ではない、滝だ」という言葉を聞いたことがあるでしょう。これは、明治の御雇いオランダ人技師ヨハネス・デ・レーケが富山の急流河川・常願寺川を目にして、思わず口にした言葉なのですが、富山発であることはあまり知られていません。このように、富山は標高三千メートルの立山連峰から水深千メートルの富山湾まで高度差4千メートルの「水の大循環」をベースにした、ダイナミックな地形と風土、ここで形成された近代産業群からなっています。

本日の入学式には約7割の県外からの入学者がおられますが、富山ではごく身近で、登山やヨット、スキーなど課外活動が可能であり、特に県外入学生の皆さんが期待する大学生活のイメージを決して裏切らないと思います。本学の教職員は学部生や大学院生と共に素晴らしい富山大学を築きたいと願っています。この豊かな風土で学生生活を満喫し、研究に邁進してください。改めてお祝い申し上げます。

平成21年4月8日
富山大学長 西頭 德三