平成21年度学位記授与式 告辞

平成21年度 学位記授与式

告辞

三月に入っても、降雪、強風、そして降雨を繰りかえす、ダイナミックな気象変化が続いております。とはいうものの、凛とした立山連峰も陽光に包まれる日が多くなり、富山の大地に春の季節がめぐってこようとしています。
只今、富山大学は、学部卒業生1,803名、大学院修士及び博士課程修了生373名、論文博士3名、そして、高岡短期大学部卒業生1名の合計2,180名に学位記を授与致しました。この中には、77名の留学生もいらっしゃいます。

富山大学を代表して、卒業生・修了生の皆さんに心よりお祝いを申し上げます。大変おめでとうございます。特に、留学生の皆さんの学びへの情熱、また、日本語習得などへの血の滲むような努力に対して敬意を表したいと思います。そして、本日、皆さんの門出を祝福するため、ご多忙の中ご臨席を賜った時澤 貢(みつぐ)・元富山大学長、小野 寛・経営協議会委員、北野芳則・同窓会連合会会長をはじめ、各学部同窓会長、後援会長のご来賓の方々に厚くお礼を申し上げます。また、この日を心待ちにしてこられたご家族の皆様にも衷心よりお喜び申し上げます。

全国で初めて3つの国立大学が統合することで、学生数1万名、教職員数2千名の合計1万2千名を擁する、日本海側でも有数の基幹的な総合大学として、平成17年10月に誕生した富山大学も今回はじめて学部卒業生を世に送り出すことができました。
それだけに、この学位記授与式は本学の歴史にとっても大変意義深く、まさに記念すべき式典になりました。

富山大学が本日、このように約2千名に近い、多数の卒業生・修了生を送り出せるようになったのは、この三大学統合による大変大きなメリットだと、私は高く評価しています。もちろん、このメリットは2千名を超えるという卒業生数の多さが生み出すスケールメリットだけにあるのではなく、多様な学問を専攻する学生の交流の場が、この総合大学としての富山大学に設定された点にあります。つまり、富山大学に学ぶ学生の皆さんにとって、人文社会系から理工系、医薬系、そして芸術系までの8学部、そして大学院の6教育部・研究科で、多種多様な分野を専攻する学生同志の密接な交流を通じて、違う考えをもつ友人をつくり、自分の専門分野だけに留まらない幅広い知識に触れることができ、切磋琢磨できる場が4年前の3大学統合によって準備されたということです。

ところで、4年前の平成18年4月の統合直後の入学式では、ご家族を含め3千名を越える皆さんが一堂に会することのできる大きな会場が確保できず、学部と大学院を分けて式典を挙行しました。そこで、私は学部入学式で次のように述べました。

「現代の社会がめまぐるしく変化する中で、人間的な素養をどのように身につけるかが重要だと思っています。私の経験では、専門分野を深めていけばいくほど、さまざまな問題や迷いが生じてきます。そんな時、人間としての幅の広さが問題の解決に役立つように思います。このことは入学間もない皆さんには十分な理解が得られないかも知れません。要は、私は豊かな教養を身につけた、高度な専門家になっていただきたいのです。」

さらに、大学院入学式では次のように述べました。

「これから本学大学院で研究を進める皆さんは、自分の専門を大切にしながら、専門は全体の一部分に過ぎないことを自覚し、狭い専門領域に溺れることなく積極的に他分野に関心を抱いてほしいと思います。そのためには自分自身が日常的に経験している生活世界を大事にし、常に自分の立っている場所を確認してほしいと思います。」

今、これら二つの式辞を要約すると、学部に入学された皆さんには、「専門知識を深めながら、一社会人として自立するための素養・たしなみを身につけてほしい」と申しました。そして、大学院進学者には、「研究では、狭い専門領域に溺れることなく、常に現実社会を直視してほしい」と述べました。私の皆さんに対するこの願いは、4年を経た現在でもいささかも変化していません。

ところが、この4年間にいろいろな出来事がありました。特に、社会の変化には予想をはるかに超えるものがあります。一昨年のアメリカ・サブプライムローン問題に端を発した世界同時不況は、百年に一度の大不況とも云われており、その結果、就職の面では未曾有の超氷河期が続き、各国の若者の前途に暗い影を落としています。
本学においてもこれまでになく厳しい就職状況にありますが、卒業後も同窓会や就職支援窓口を通じて皆さんを支えていきます。是非、悩んだ時には富山大学に来て下さい。

本日をもって、学部卒業生、そして大学院修了生の皆さんは、一部の大学院進学者を除き、長年親しんだ富山大学を去ることになります。私は皆さんを送り出すに当たり、また、統合問題に直接関わったものの一人として、万感の思いが胸に溢れるのを禁じ得ません。この記念すべき日の告示を結ぶに当たり、特に、三つのことを述べたいと思います。

第一に、皆さんは新生富山大学の第一回目の卒業生としての矜持、つまりプライドを持って生きてください。本学は基幹的な総合大学となり、まさに発展途上にありますが、教職員は一丸となって、後輩の教育と研究に専念する決意です。私たち教職員は皆さんと手を携え、共に歩んで行きたいと思っています。

第二に、自分の選び、信ずる道をあきらめず邁進して下さい。人生には明暗はつきものです。皆さんの行く前に風雨が吹き荒れる実社会が控えています。けれども、嵐を恐れ、現実の社会から逃避してはいけません。

そして第三に、感謝の気持ちを忘れないで下さい。今、卒業生の皆さんは、大学卒業という喜びの絶頂にいると思います。まさに、長い学生生活が実を結んだ瞬間です。しかし、これはご家族の助けがあってのことです。所詮、現代社会では1人では一日たりとも生きられないのです。式典終了後直ちに、ご家族に感謝の気持ちを伝えてください。遠くにいる家族には電話やメールでも結構ですが感謝の気持ちを伝えて下さい。

皆さんは、これからも母校の富山大学との強い絆を保ち、大学で得た幅広い知識や経験を活かし、そして友人を大切にし、健康に留意して、どうか幸せな生涯を送って下さい。改めて、卒業おめでとうございます。

平成22年3月24日
富山大学長 西頭 德三