平成22年度学位記授与式 告辞

平成22年度 学位記授与式

告辞

三月中旬に入っても、降雪を繰りかえす、ダイナミックな気象変化が続いておりましたが、ようやく、凛とした立山連峰も陽光に包まれる日が多くなり、富山の大地に春がおとずれようとしています。本日、皆さんの門出を祝福するため、ご多忙にも関わらずご臨席を賜った、来賓の方々をはじめ、本学ゆかりの皆様方に厚くお礼を申し上げます。

只今、学部卒業生1,770名、大学院修士課程修了生378名、博士課程修了生40名、論文博士3名の合計2,191名に学位記を授与致しました。この中には、71名の留学生もいらっしゃいます。まず、富山大学を代表して、2,191名の卒業生・修了生の皆さんにお祝いを申し上げます。特に、留学生の皆さんの外国・日本での学びへの情熱、そして今日までの努力に対して敬意を表したいと思います。また、この式場には、卒業生・修了生の晴姿を心待ちにしてこられた多数のご両親やご家族もご出席になっておられます。一つの区切りと安堵しておられるものと推察しております。

本日、大学院進学者を除き、学部卒業生、そして大学院修了生の皆さんは、長年親しんだ富山大学を去ることになります。私は、皆さんを社会に送り出すに当たり、富山大学そのものや現実社会がめまぐるしく変化する中にあって、皆さんの立ち位置について、3点に絞り述べて、学位記授与式の告辞といたします。

第1は、富山大学が置かれた状況への認識と社会に出る皆さんへの要望についてです。みなさんのお手元には、「富山大学歴史マップ」という資料があるかと思います。明治6年の人間発達科学部の前身となる新川県小学校教員養成所の開校から、これまで138年の歴史を持つ富山大学は、平成17年10月に、旧富山大学、旧富山医科薬科大学、そして旧高岡短期大学の県内三つの国立大学の再編・統合により、8学部・1研究所・附属病院の10部局をもつ、日本海側有数の基幹的な地方総合大学として再出発しました。
これは、1千兆円に及ぶ国債残高の存在に象徴される不安定な経済状況の中にありながらも、国際レベルの教育・研究水準の維持・向上のためには、大学の規模拡大が不可欠であり、そして地方における少子高齢化の進展とそれに伴う学生確保をいかに行うかといった様々な問題が複雑に絡み合い、解決のためには、大胆な再編・統合は避けて通れないという問題意識を受けての再出発でした。
これまで、富山大学は、再編・統合時に申し合わされた事項の実現に向けて努力をするとともに、三大学再編・統合のスケールメリットを最大限に活かそうと務めてきました。しかし、未解決な課題も残っているのも事実です。皆さんの学生生活において、目にみえるような変化は少なかったかも知れません。
富山大学は、基幹的な総合大学となって5年半、まさに発展途上にありますが、6年制の医学部を除くと、皆さんの大多数は新大学発足後の学生となります。教職員は一丸となって、同窓生となる皆さんと手を携え、素晴らしい大学となるよう一層努力いたします。若干、抽象的な表現になりますが、皆さんは138年の歴史を持つ新生富山大学の卒業生としての矜持、つまりプライドを持って活躍してください。再編・統合の話し合いに直接参加したものの一人として、皆さんへの要望です。

第2は、3月11日に発生した東北関東大震災と対応についてです。当日は、後期入学試験の前日であったことから、東北地方等東日本からの受験生に大きな影響もありましたし、在学生など本学関係者の中でも甚大な被害が出ているところです。現在、富山大学は受験できなかった受験生への対応や在学生を始めとする罹災者の支援に最大限の努力を続けています。
今回の大震災は想定外とか、観測史上最大とか、様々に表現されております。私は教育・研究に直接関わるものとして、あるいは科学技術の発展に関わってきたものとして、その視点を根本的根底的に大幅に変えざるを得ない緊急事態だと思っています。「なぜ防潮堤は10メートル以下だったのか」「なぜ原子炉冷却装置が地震や津波で作動しなくなることを想定できなかったのか」など、素朴な疑問が次々と湧出してきます。
現時点でしかもこの場で、多くを語る余裕がありませんが、富山大学でそれぞれの専門分野を学び、実社会でそれを活かそうとする皆さんにとって、また、1人の市民、家庭人として、この大震災を契機に、皆さんそれぞれが、根本的な疑問を抱き、解決への視点を常に涵養し、そして、復興に向けて何ができるかを考え、かつ具体的に行動していくことを要望します。

第3は、第2の問題と深く関連しますが、学びの場を離れても「創造力の涵養」を忘れないでほしいということです。
私は今年度末をもって富山大学を去ることになります。次期学長は現在、富山大学附属病院長でいらっしゃる遠藤俊郎先生です。本日、皆さんのお手元には、「誇りを、胸に」という印刷物があるかと思います。
この中で、私は「解答なき世の難問に迫れ」という言葉を掲げました。つまり、社会に出るということは、日々解答のない問題に当ることにほかなりません。皆さんは卒業論文や修士論文の作成を除けば、正しい答えのある問題を解き、その結果で評価されてきました。ところが、実社会では、そんな問題は皆無です。私は、その解答を引き出す能力を皆さん一人ひとりのクリエイティブな能力、つまり「創造力」だと思っています。これが私の約40年間に及ぶ大学生活の結論です。

卒業式間際になって、私たちは世紀的な、あるいは人類史上稀な難問を突きつけられました。これを解く鍵は豊かな創造力と遠藤次期学長の掲げられる「夢と愛」を持ち続けることに他ならないと思います。
自分が選び、信ずる道を邁進して下さい。人生には明暗はつきものです。嵐を恐れず、現実社会から逃避したり,他人の所為(せい)にしたりしてはいけません。これからも母校の富山大学との強い絆を保ち、健康に留意して、どうか幸せな人生を送って下さい。

平成23年3月23日
富山大学長 西頭 德三