平成24年度入学式 式辞

平成24年度入学式

式辞

本日、平成24年度入学式において、学部入学生1,938名、大学院入学生433名、総勢2,371名の皆さんを富山大学に迎えることができました。入学生の皆様、ご家族の皆様、ご入学おめでとうございます。ご臨席頂いたご来賓や本学ゆかりの皆様方、そして本学教職員、在学生一同と共に、富山大学を代表して、心よりお祝いを申し上げます。
今この場には、富山大学での学生生活を共にし、将来の日本、世界を担う、2,000余名の若者が、一堂に集っています。皆さんの輝かしい表情や、張りつめた雰囲気の中に、私も感激と興奮の気持ちを禁じえません。入学式の場を共にする学長として、皆さんへの期待と思いを込め、式辞を述べさせていただきます。

はじめに富山大学について知っておいていただきたいことを二点述べます。
第一は、現在の富山大学は、2005年10月に、県内既存の旧富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学が再編・統合し、誕生した新しい大学であることです。異なる歴史と伝統を持つ3大学の統合は、全国でも例をみない唯一のものであり、その結果、8学部に1研究所・附属病院を加えた10部局に、約1万名の学生が学ぶ、全国有数の大型総合大学となりました。世界に向けて業績・情報を発信するNational Centerとして、同時に地元に貢献できる知財と人材を提供できるRegional Centerとして、富山大学は様々な課題と取り組みながら発展を続けています。また学生諸君には、本学の特徴を生かしながら、キャンパス間・学部間の壁を越えた交流を深め、より充実した教育体制を提供するための取り組みを進めています。
もう一点は、富山大学を含め全国の国立大学86校は、2004年から法人化され、各大学が独立した一法人一大学組織となったことです。法人化とは、国が直接に全てを管理するのではなく、運営方法や教育・研究活動に独自性を認めることにより、各大学の高いレベルでの経済自立と機能強化を図る体制であります。ただ組織・運営の形は変わっても、富山大学が我が国の伝統ある国立大学の一つであるという基本は今も変わっていません。皆さんの比較的低く抑えられた経済的負担や恵まれた教育環境は、国、すなわち多くの国民の方々によって支えられています。国立・富山大学の学生として、皆さんは誇りと責任、そして感謝の気持ちを忘れないでください。

大学時代は、人生のなかで、皆さん自身がコントロールできる時間や機会を最も多く持つことのできるチャンスの時です。自分自身のマネージメントとイノベーションのマインドを発掘し、パワーを蓄え、成長させる時です。心がけていただきたいことを三点申し上げます。

第一は、「夢を持つ」ということです。
夢を持つ事により、目標、そして実現のための思考・行動が導かれてきます。自分の好きなことは何か、何をしたいのか、考えてください。夢の実現に向けた基礎を大学時代に創ってください。
夢を見るということは脳の最も重要な働きで、人間力の向上・挑戦の根源です。世界で活躍する多くの先人は、10代、20代で持った夢を実現しています。ソフトバンク社長の孫 正義氏は、「若いということは、無限大の夢を持つことができる。そして、自分の持った夢に自分の人生は比例する」と述べています。私も同じように考えます。皆さんに求めたいことがあります。夢の実現に向け、オンリーワンではなくナンバーワンを目指す感性を持ってください。今世界で求められているのは、夢・目標の実現のため競い合うことのできる力を持った人材です。オンリーワンは人生を重ねた後、自分自身に対して思うことであり、これからを生きる皆さんには、やはり最初の目標はナンバーワンにおいて欲しいと思います。

第二は、「気づきの力を養って欲しい」ということです。
高校までの教育で主に評価されてきた個人の能力は記憶力でした。知識の詰め込みも、学びの基礎を育むには、大切な手段であると思います。しかしコンピューター技術の進歩・普及した現代においては、知識・情報を記憶する人間の能力は、量・スピード・正確さなどいずれをとってもコンピューターには遠く及びません。しかもデータは誰の元にも平等に届きます。あふれる情報・知識の中から他人は気づかないものを見つけ出す、あるいはいくつかを繋ぎ合わせることで新しい価値を見いだす、そのための気づきの力こそが我々人間には求められています。気づきの力において、コンピューターが人間に勝ることは永遠にないと考えます。
大学では模範解答は卒業しましょう。新しい自分自身の答えを探し、言葉や文字で発信してください。怖がらずに挑戦し、それを続けてください。私が先輩より言われた言葉、「真似をするな。他人とは異なる答えを用意しろ」「疑問を感じた時、答えに満足できない時、簡単に妥協するな。本気で勉強し自分の答えを探れ」「目の前にある知識や情報は全て過去のものであり、新しい発見や発展は、今は見えない先の世界にしか存在しない」など、今も耳に残っています。自分だけの気づきを形にできる楽しさ、感性を大切にしてください。

第三は、「遊びの心」を育んでいただきたいことです。
大学生となる皆さんとって、遊びとは何か、学びとは何か、問いたいと思います。私は、学びと遊びは決して分けられるものではなく、表裏一体のものであると思っています。ただ学びには、人から与えられ、頭で理解する受け身の要素が多く、一方遊びには、自身の気持ちで選択し、経験の中で身体が覚える、能動的な要素が大きいと思っています。単位修得のみを考えるだけの学生生活で、終わって欲しくはありません。授業、サークル、アルバイトなど様々な場において、人生の糧となる豊かな遊びの心を育ててください。

夢、気づきの力、そして遊びの心について述べてきました。根本には、人として、真摯さ、優しさ、そして己の感性を大切に持ち続けて欲しいというという思いがあります。社会がどのように変化しようとも、人として皆さんが持つそれぞれの個性を大切に育んでください。人と人との直接の語らいや触れ合いを大切にし、相手の目の動きや息づかい、仕草のなかにその人の思いを感じる優しさを忘れないでください。私は、人生において最も大切と考えている言葉は何ですか、と問われた時、「愛」と答えています。
最後になりますが、本日の入学式を迎え、昨年の東日本大震災直後の入学式を思い出さずにはおられません。被災地は今も復旧復興が遅れ、被災された方々は物心両面で困窮、苦難の中にあります。皆さんの中にも被災された方がおられることと存じます。我々は、今回の震災での経験と当時の思いを風化させることなく、「人としての優しさ」と「苦難に打ち勝つ強い心」を大切に持ち続けて行かねばなりません。それが今の時代を生きる、我々日本人の努めであり、新しい時代を拓く力になると信じています。

人生は、後戻りのできない一方通行の道です。皆さんが夢を描き、充実した学生生活を送られることを祈り、式辞と致します。

平成24年4月5日
富山大学長 遠藤 俊郎