平成25年度入学式 式辞

式辞

 例年になく寒さの厳しかった日々も過ぎ、富山の地にも桜の季節がやって参りました。 本日、平成25年度入学式において、学部入学生1,924名、大学院入学生408名、総勢2,332名の皆さんを富山大学に迎えることができました。 入学生の皆様、ご家族の皆様、ご入学おめでとうございます。本学教職員、在学生一同を代表し、皆さんに心よりのお祝いを申し挙げます。 またご来賓や本学ゆかりの皆様方には、ご多忙の中ご臨席賜り、厚く御礼を申し上げます。富山大学は、2005年10月に、県内既存の旧富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学が再編・統合し、新しい総合大学として再出発し7年半が経ちました。 異なる歴史と伝統を持つ3大学の統合は、全国でも唯一の存在です。現在は、8学部に1研究所・附属病院を加えた10部局に、約1万名の学生が学ぶ、全国有数の大型総合大学として、様々な課題と取り組みながら発展を続けています。また富山県内外や世界で、8万人を超える同窓の皆さんが多様な領域で活躍されています。
 今この場に、富山大学での学生生活を共にし、将来の日本、世界を担う、2,300余名の若者が、一堂に集っています。皆さんの輝かしい表情や、張りつめた雰囲気の中に、私も感激と興奮の気持ちを禁じえません。入学式の場を共にする学長として、皆さんへの期待と思いを込め、式辞を述べさせていただきます。

 皆さんがこれまで生きてきた時代は、科学・技術の目覚ましい進歩があり、世界の社会・経済体制は急激に変貌するとともに、人々の日々の生き方や価値観も大きく変化してきました。これからの時代を担う皆さんには、分野を問わず、これまで以上の高いレベルでの文化的・科学的思考や技量を持ち、新しい価値観で歴史を創って頂かねばなりません。未来を担う皆さんに対し、我々大学教職員は勿論、社会、国家がかける期待や希望は、皆さんが思っているよりも、はるかに大きいことを心に刻んでください。

 人は生きる時代を選ぶことはできません。そして人生は一度きりの逆戻りのできない道であります。2千年以上も前に、孔子とその弟子たちの言葉を記した「論語」の中に、「子曰く、我十五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして迷わず。五十にして天命を知る。」との有名な一文があります。天命とは天の定めごと、人間の力を超えた運命であり、若い皆さんに与えられた天命がどんなものか、今その答えを得ることはできません。今言えることは、皆さんは高校までの生活で学をなし、自身の将来への思いを探りながら進路を決め、大学受験の壁を乗り越え、今ここに大学入学の日を迎えているということです。これから皆さんが過ごす大学時代は、ご家族など多くの人々に支えられてきた高校までの子供の時代から、30代40代の自立、成熟する大人の時代へと、人生の歩みを進めるための分岐点となります。また学生時代は、人生のなかで、自身の時間を最も自由に使うことのできるかけがえのない時でもあります。大学時代に何を学び、何を経験し、どのように過ごすかは、あなたの将来に待つ天命をも左右することとなるでしょう。大学時代を、人生の単なる通過点としてはなりません。あなた自身の新たな自己発見、そして素晴らしい人生を構築するための基盤づくり、研鑽の場としてください。

 大学生活で大切にしていただきたいことを3点述べます。
 第一は、自分自身の強みを見つけ、伸ばすことです。
 どのような分野においても、人が成長し、価値ある仕事を成し遂げるには次のようなことが必要と言われています。「基本的知識・技術を理解・習得し、志を育み、研鑽・挑戦・失敗・成功の中に学び・経験を重ね、それを糧に新しい事実・知見を発見する、あるいは専門的知見や情報を複合的に集約して新たな貢献を生み出す」ことです。このような考え方を、皆さんはこれから人生で常に持ち続けていかねばなりません。そのスタートに立つ皆さんに、特に望みたいことを述べます。それは、自己の持つ力を信じ、強みを見いだし、それをのばす、という姿勢を貫いて欲しいということです。簡単なことではありませんが、だからこそ価値があります。大学時代こそは、これまでやったことがない、これまではできなかった、自分にはとても無理など、と思うことにこそ、失敗を恐れることなく自由に取り組みましょう。自身の志や挑戦への可能性に対し、自ら枠をはめたり、はじめから見切りをつけるような気持ちは捨てましょう。自分にもできるかもしれない、どうすればできるかを考える、自分にしか思いつかない形でやってみようなど、自己の可能性を追求してください。明るく、前向きな気持ちで努力、研鑽を重ねてください。
 富山大学での経験が、あなた自身の再発見、成長に繋がっていくことを期待します。

 第二の点は、自身の感性と人との交わりを大切にして欲しいということです。
 今、我々の日常はスマートフォンや携帯電話なしには考えられない時代となっています。知識・情報を記憶・伝達する人間の能力は、量・スピード・正確さなどいずれをとってもコンピュータには遠く及びません。しかもデータは誰の元にも平等に届きます。あふれる情報・知識の中から他人は気づかないものを見つけ出す、あるいはいくつかを繋ぎ合わせることで新しい価値を創造する、そのような力を育むことが、我々人間に今こそ求められています。
 ここで皆さんにとって「学びとは何か、遊びとは何か」を問いたいと思います。私は、学びと遊びは決して分けられるものではなく、表裏一体のものであると思っています。ただ、学びには、人から与えられ、頭で理解する受け身の要素が多く、一方遊びには、自身の気持ちで選択し、経験の中で身体が覚え、常に新たな展開を作れることなど能動的な要素が強い点が、大きく違うと思っています。授業、サークル、ボランティア、アルバイトなど大学で経験する様々な場において、人生の糧となる豊かな遊びを経験してください。遊びの中にこそ、あなた自身の感性が育まれると信じています。
 人は一人だけでは生きていくことはできません。人としての真摯さ、優しさを持ち、人との直接の語らいや触れ合いを大切にしてください。相手の目の動きや息づかい、仕草のなかに互いの思いを感じあって下さい。時には自分から相手に近づく勇気も必要でしょう。そのような人と人とのふれあいの中で、良き師、良き友との出会いを見つけることができたなら、それは人生を通じての財産となり、大きな幸せとなります。

 第三は、スポーツ、芸術の勧めです。
 スポーツや芸術の世界では、よく『心・技・体』という言葉が使われます。木に例えれば、心は幹、技は枝葉、そして体は根にあたるのでしょう。また最近は、成人病・老化予防の最も有効な方法は継続的な運動と趣味の習慣を持つこと、との報告が増えています。スポーツ、芸術を楽しみ、続けることが、豊かな人生の根幹となります。本学にも体育系、文化系の様々なサークルがあります。大学時代に、皆さん全員が何らかの形でスポーツ、芸術の習慣を持たれることをお勧めします。

 最後になりますが、本日の入学生の中には、東日本大震災被災地出身のかたも多数おられます。被災地は今も復旧復興が遅れ、被災された方々は物心両面で困窮、苦難の中にあります。我々は、今回の震災での経験と当時の思いを風化させることなく、「人としての優しさ」と「苦難に打ち勝つ強い心」を大切に持ち続けて行かねばなりません。それが今の時代を生きる、我々日本人の努めであり、新しい時代を拓く力になると信じています。
 富山大学において、皆さんが自己の力を再発見し、心身を鍛え、夢に向かい、充実した学生生活を送られることを祈り、式辞と致します。

平成25年4月4日
富山大学長 遠藤 俊郎