2013年を振り返って(2013年 年末挨拶)

 2013年も残すところ僅かとなりました。

 近年の科学・技術の進歩は、世界そして日本の社会・経済構造に大きな変革をもたらし、人間社会は地球規模で一つの世界を考えなければならぬ時代を迎えています。これに伴い人々の考え方や生き方などその価値観も大きく変化しています。人は生きる時代を選ぶことはできません。時代の変化や流れを読みながら、確固たる信念と明確な目標を持ち、実現するため思考・行動を止めることなく続けることこそが、我々大学人の持つ底力であり、人としての生き様であると信じます。

 本年、我が国では、「日本再興」に向けた多くの戦略、施策が打ち出され、実行に移されてきました。国立大学の発展・変革を求める社会の声は一段と大きなものとなり、教育再生実行会議や産業競争力会議等からの改革案が相次いで出され、富山大学を取り巻く環境も急激かつ大きく変化しています。
 11月には文部科学省から「国立大学改革プラン」が出され、第3期中期計画を強く意識した、中長期的視野に立つ国立大学改革の方向性が示されています。昨年来検討されてきた各大学及び各領域の「ミッションの再定義」についても、一定の見解が述べられています。その中で触れられている各大学の在り方、機能強化の方向性については、1.世界最高の教育研究の展開拠点、2.全国的な教育研究拠点、3.地域活性化の中核的拠点、の3つのカテゴリーがあげられています。それぞれの要素を併せ持つことこそが、総合国立大学の役割ではありますが、厳しい時代背景の中で富山大学の特色、存在感を示すためには、上記の要素に軽重をつけることも必要と考えます。

 学長に就任して2年9月が経ち、富山大学を取り巻く環境の厳しさを改めて強く感じています。富山大学は、3大学統合という全国で唯一かつ最大の組織再編・改革を成し遂げた大学です。しかし統合故の課題を十分に克服できぬまま、法人化後の大学改革の流れの中で、他大学に大きく遅れをとってしまった現実を認めぬわけにはいきません。本年は、本学の厳しい財務状況を鑑み、「平成28年4月に向けた各学部人件費10%留保」の計画を提案、実行させていただくことになりました。教職員の皆様にはご負担をおかけすることになりますが、今なすべきことを行わなければ、本学の真の発展はないという思いをご理解いただきたいと存じます。引き続き、共通教育の一元化を図るとともに、教育・研究・社会貢献・組織運営に関わる機能の強化、改革に向けた検討を積極的に進めてまいります。
 今我々に最も求められていることは、全構成員が各自の持つ知識と技量を発揮するとともに、キャンパス・学部の壁を越え連携し、情熱を持って行動することです。富山大学は、将来の発展に向け、今まさに正念場にあります。皆様が力を結集し、これを乗り越える賢さと変化できるしなやかさを発揮してくださるようお願いいたします。

 12月19日の日経新聞に、劇作家の平田オリザ氏の印象深い言葉があったので一部を引用させていただきます。「会話と対話は違う。私の定義では会話は親しい人とのおしゃべり。それに対し、対話は異なる価値観を持った者同士が違いをすりあわせる。日本の稲作文化の伝統は同じような価値観の中で、わかり合える文化を育んだ。だが欧州などは宗教や文化の違う相手に自分を説明しないとわかってもらえない、説明し合う文化。これからの時代・社会では、我々は説明し、わかり合える能力を磨く必要がある。」

 新しい年、国立大学として果すべき役割を考えながら、富山大学として在るべき姿を追求し、発展を実現して参りましょう。良い年をお迎えください。

2013年12月26日
富山大学長 遠藤 俊郎