平成26年度入学式 式辞

式辞

 富山の地にも桜の季節がやって参りました。本日、平成26年度入学式において、学部入学生1,908名、大学院入学生430名、総勢2,338名の皆さんを富山大学に迎えることができました。入学生の皆様、ご家族の皆様、ご入学おめでとうございます。本学教職員、在学生一同を代表し、皆さんに心よりお祝いを申し挙げます。またご来賓や本学ゆかりの皆様方には、ご臨席を賜り、厚く御礼申し上げます。
 新入生の皆さんの輝かしい表情や、張りつめた雰囲気の中に、私も感激と興奮の気持ちを禁じえません。皆さんへの期待と思いを込め、式辞を述べさせていただきます。

 ここ富山県は、北アルプスの山々から富山湾へ流れ出る日本一の水資源に支えられた、豊かな自然と農林水産資源に恵まれ、また大伴家持の万葉文学以来の文化・教育の歴史・伝統、江戸時代からの薬業や伝統産業を基盤に発展した多彩な産業活動等、他の地域にはみられない特色と豊かさに溢れる県です。富山大学は、2005年10月に、異なる歴史と伝統を持つ県内既存の旧富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学が再編・統合し、県内唯一の国立大学として新しい歴史を刻み8年半が経ちました。 現在は、全国有数規模の総合大学として、8学部に1研究所・附属病院を加えた10部局に、約1万名の学生が学び、また富山県内外や世界で、8万人を超える同窓の皆さんが多様な領域で活躍されています。

 皆さんが生まれ、育った、世紀をまたいだ時代は、科学・技術の進歩や新しい情報手段の普及により、社会・世界は過去の歴史にはなかった速さと広がりで変化しています。20世紀最大の発明家・事業家と言われるスティーブ・ジョブズが、アップル社のマッキントッシュを世に出したのは1984年でありました。それより以前は、知識・情報は人が自ら求め、探し、行動してはじめて獲得、発信できるものあり、その量は限られ、達成には多くの時間が必要でした。一方最近では、知識・情報を記憶・伝達するコンピュータの能力は、量・スピード・正確さなどいずれをとっても人の能力を越えるものとなり、人は世界のどこにいても、日々発信される最新の情報を容易かつ大量に入手できるようになりました。
 人は今、IT情報の活用による「より高い賢さと便利さ」を求め続け、同時にそれに適合させる形でグローバルな社会、世界を作り上げています。これに伴い人の生き方、考え方、価値観も大きく様変わりしています。個別的・異質的な形を是とする新たな資本主義体制が世界的潮流となり、日本人の特徴とも言える個人の勤勉さや平均的能力の高さのみでは、変化する世界に対抗することは難しくなっています。しかし一方で、日本人の持つ人間力や技術力に対する世界からの信頼、期待は今もなお大きなものがあります。

 今世界は、これまでの発見、発明の成果を具現化し、新たな応用・創造求め、拡げる時代を迎えています。今を生きる皆さんには、あふれる知識・情報の中から必要な課題を選択し、さらに複数の課題を適切に繋ぎ合わせることで新しい価値を創造する力を持つことが求められています。目的達成に向け、皆さんにとって最も重要な時は、人生で自身の時間を最も自由に使うことのできるこれから大学時代です。

 大学生活は「よく学び、よく遊び」そして「人との交わりと対話」を大切に過ごして下さい。初めに「学びとは何か、遊びとは何か、」を考えて下さい。私は、学びと遊びは決して分けられるものではなく、表裏一体のものであると思っています。ただ、学びには、人から与えられ、頭で理解する受け身の要素が多いのに対し、遊びには、自身の気持ちで選び、経験の中で身体が覚え、常に新たな展開につなげることのできる能動的な要素の強いことが、その違いと思っています。授業・学業においては、ネットなど容易に触れることのできる知識・情報媒体のみに頼るのではなく、本を読み、歴史背景や基本的知識を理解し、事象の現場を見聞し、自身の感性で考え、独自の知見を模索して下さい。その過程に時間をかけて、全力で取り組んで下さい。また大学生活では、いつも気持ちの余裕を持ち、達成の喜びを感じることのできる、学業以外の活動にも取り組んで下さい。サークル、ボランティア、アルバイトなど様々な場において、人生の糧となる豊かな遊び、挑戦を経験してください。遊びの中にこそ、あなた自身の感性が育まれ、新しい自己発見もできると信じています。これまでやったことがない、これまではできなかった、自分にはとても無理と思うようなところにこそ、あなたの人生への新たな可能性が待ち受けています。学びの時も遊びの時も、明るく、前向き気持ちを持ち、努力、研鑽を重ねてください。
 人は一人だけで生きていくことはできません。人としての真摯さ、優しさを持ち、人との直接の語らいや触れ合いを大切にしてください。人の話を良く聞き、人の気持ちを受け入れ、同時に自身の思いを相手に伝え、互いに理解しあうための対話を交わしてください。メールの言葉のみに頼るのではなく、直接に人と向き合い、目の動きや息づかい、仕草のなかに互いの思いを感じあって下さい。皆さんの周りには、いつも多くの友人、先輩・後輩、そして教職員がいます。様々な人とのふれあいの中で、良き師、良き友との出会いがあったなら、それは大きな幸せであり、人生の宝物となることでしょう。

 最後になりますが、本日の入学生の中には、東日本大震災被災地出身のかたも多数おられます。被災地は今も復旧復興が遅れ、被災された方々は物心両面で困窮、苦難の中にあります。今回の震災での経験と当時の思いを風化させることなく、不幸な出来事を繰り返さないための教訓としていく事が、新しい時代を拓く力になると信じます。

 富山大学において、皆さんが自己の力を再発見し、心身を鍛え、夢に向かい、充実した学生生活を送られることを願い、また我々教職員も全力で皆さんを支援することをお約束し、式辞と致します。

平成26年4月8日
富山大学長 遠藤 俊郎