平成26年度学位記授与式 学長告辞

告辞

 卒業生・修了生の皆さん、そして学生諸君を支えてこられたご両親やご家族の皆様、ご卒業、誠におめでとうございます。本日、学部卒業生1,834名、大学院修士課程修了生320名、博士課程修了生36名、論文博士7名、合計2,197名に学位記を授与致しました。この中には、79名の留学生の方が含まれています。2,000名を超える若人が、富山大学から、それぞれの道に巣立つ日を迎えることができたこと、私ども教職員にとっても大きな喜び、感激でございます。富山大学を代表し、心からお祝い申し上げます。また卒業生、修了生の門出を祝福するため、ご臨席を賜わりましたご来賓並びに本学ゆかりの皆様には、厚く御礼申し上げます。
 これまでの4年間を富山大学で共に過ごした学長として、卒業生、修了生の皆さんの将来に期待と願いを込め、告辞を述べさせていただきます。

 近年の日本そして世界は、科学技術の進歩や情報手段の変化・普及により、これまでの歴史には見られなかった社会・経済構造変革の時代を迎え、これに伴い人々の考え方や生き方など、その価値観も大きく変化してきました。人類は以前には考えも及ばなかったような大きな物質的豊かさや便利さを手にする一方で、人としての行動には、これまで育んできた感性や知性では制御しきれない、新たな領域に踏み込んでいるというとまどいや、怖さも感じます。また、地球規模での温暖化や環境破壊など、人類が生きていく上での新たな問題も顕在化し、その対応が求められています。卒業される皆さんは、まさに変革の時代に生き、成長し、これからは、それぞれの専門領域において、社会の一員としてその将来を担うことになります。皆さんの生きてきた時代とはまったく世相の異なる、戦後からの時代を生きた一人の人間として、混沌の時代であるからこそ、世代を超えて伝えたい、そして共に考え大切にしていきたい思いについて、述べたいと思います。
 「人としての優しさ」そして「己に対する厳しさ」についてです。

 人が生きるために最も大事にしたいもの、それは「相手に対するやさしさと支え合う心」だと思います。
 皆さんにお尋ねします。皆さんの学生時代の経験で、今最も記憶に残る出来事はなんだったでしょうか。私は、4年前2011年4月7日に行われた入学式のことを思い出さずにはおられません。3月11日の東日本大震災直後の混乱の中で、なんとか開催に至ることができた入学式でありました。仙台生まれ、福島育ちである私にとって、悲しみと苦しさの中で臨んだ入学式でありました。しかし当日会場で、皆さんの、緊張感の中で喜びと期待にあふれる若々しい姿と眼差しを目の当たりにした時、生きることの素晴らしさと苦労を乗り越えるための新たな力を感じたこと、今も忘れることはありません。またその後の、世界中の多くの人々からの支援や励ましが、どれほど被災した人々の力となったことか、そして一つ一つの人の心の優しさが、どんなに人を癒す力となることか、身にしみて感じることもできました。一方で現実には、被災地では原子力発電所事故や津波被害の傷跡が今も残り、多くの人々が苦しみと心の傷を癒す事のできない日々を送っています。
 人は一人だけで生きていくことはできません。人は地球という宇宙空間の中で、自然と共に存在し、人々との関わりの中でこそ生きていける存在です。両親・家族、そして人生のパートナー、友人や職場の同僚など、出会い、共に生きる人々への優しさ、支え合う心を大切にし、平和で幸せな生活を築いてください。社会への貢献を果たしてください。そして地球の自然、人が生きる環境を守ることへも思いを広げてください。

 

 同時に皆さんには、己に対する厳しさを持ち、あなたにしかできない目標に向けて挑戦を続けて欲しいと願っています。私は、専門である脳神経外科医師として過ごした時代、「よく学べ、されど真似はするな」「あきらめず努力を続ける」の二つの気持ち・姿勢を常に心がけ、診療・研究活動における挑戦と努力を続けてきました。実は「学ぶ」という言葉は「まねぶ」に由来し、「真似る」と同じ語源であるといわれています。「学ぶ」ために真似ることは必要ですし、技術の進歩は真似をすること、盗むことで初めて得られるということもよく言われています。私が申したいのは「真似だけで満足していては、新しいことは何も生まれず、先人を超えることもできない」ということです。世の中では正解は決して一つだけではありません。正解に到達する道筋も多様であることが少なくありません。私は皆さんが、他人とは違った独自の考えを持ち、新しい答えを探り導き出し、新たなものを創造してくださることを期待しています。
 同様に、努力を続けることの大切さについては、多くの人々が言葉に残しています。世界大戦を勝利に導いたイギリスの政治家、軍人そして作家であるウインストンチャーチルは、「力や知性ではなく、地道な努力こそが能力を解き放つ鍵である」と述べています。また今年も大リーグでの挑戦を続けるイチローは、「壁というものは、できる人にしかやってこない。越えられる可能性がある人にしかやってこない。越えようという気持ちのない人に壁はない。だから、壁があると感じた時はチャンスだと思っている。」と語っています。

 これから皆さんがそれぞれ歩む道で、人に対する優しさと己に対する厳しさを持ち、辛抱・研鑽を重ね、10年あるいは20年後でしょうか、自分にしか作れないもの、自分が作ったと言えるものを是非生み出してください。

 去る3月14日には、北陸新幹線が開業しました。富山県は自然と産業力に恵まれた多くの特色、強みを持つ県であり、将来の発展に向けた期待が膨らみます。我が富山大学も本年10月には再編統合10周年を迎えます。世界に向け新しい業績や情報を発信するNational Centerとして、同時に地元に貢献できる知財と人材を提供できるCommunity Centerとして、これまで以上にその役割を果たし、皆さんにとって誇れる母校として発展できるよう、教職員とともに努力してまいります。皆さんも、富山県内外を問わず活躍し、また同窓生として母校富山大学を見守り、これからも助言やご支援をお寄せください。
 皆さんが、素晴らしき人生を送られることを祈り、学長告辞と致します。

平成27年3月24日
富山大学長 遠藤 俊郎