平成29年度学位記授与式 学長告辞

告辞

 肌寒さの中にも春の兆しが感じられる季節となりました。
 本日富山大学は、66名の留学生を含む、学部卒業生1,821名、大学院修士課程修了生364名、博士課程修了生49名、論文博士4名、合計2,250名に学位記を授与致しました。卒業生・修了生の皆さん、そしてご家族の皆さん、誠におめでとうございます。
 2,000名を超える若者が、それぞれの道に巣立つこの良き日を迎えることができたこと、私ども教職員にとっても大きな喜び、感激であります。富山大学を代表し、卒業生・修了生の門出を祝福し、心からお祝いを申し上げます。またご多忙にも関わらず、ご臨席を賜わりましたご来賓の方々や本学ゆかりの皆様方には、厚く御礼を申し上げます。

 今、世界は大きく変化しています。人類は、これまでも常に思考し、創造し、そして失敗・工夫を繰り返しながら、新しい時代・歴史を重ねてきました。最近の状況は、科学・情報技術の開発・普及が、過去の歴史にはなかったスピードと広がりを持ち、世界の社会・経済構造をも大きく変えようとしています。
 本日卒業・修了の日を迎えられた皆さんは、まさに革命的とも言える21世紀の変化の時代を生き、成長してこられました。進歩がもたらした物質的・経済的豊かさや便利さを享受する一方で、各地での大規模な自然災害、原発事故や地球温暖化等、科学技術が産み出した社会的歪みや不確実さも、身近な事象として感じてこられたことと思います。このような高度で複雑な未来社会への展開は、不確実で不安定な怖さを包含しつつ、今後もその歩みを止めることはないでしょう。人工知能と人間力の共生、あるいは人々が世界規模でつながる真のグローバル化が、今後の大きな命題になると感じます。

 社会・世界は皆さんを待っています。皆さんは、大学で身に付けた知識・技能・経験を糧に研鑽・奮闘を重ね、それぞれが進む分野において、プロフェッショナルとして活躍してください。変化、混沌の時代だからこそ、単なる技術的専門家いわゆるエキスパートやスペシャリストではなく、人工知能にはない人間力を持ち、人々のため、社会のために貢献できる真のプロフェッショナルとして、人生を歩んでください。  
 パーソナルコンピューターも携帯電話もなかった1971年に大学を卒業し、その後の約50年を過ごしてきた私より、これからの新しい時代を生きていく皆さんに伝えたい思いを3点申し上げます。

 第一は、あなた自身の「知性」を磨き、育んでいただきたいという点です。一人の人間として、プロフェッショナルとして、自己発信・自己改革のできる人間力を発揮するため、「知能」ではない、「知性」こそを大切にしてください。
 「知能(intelligence)」は、直接予想可能な知識を集積し、物事の把握・処理・適応を行う実用的な知的能力です。一方「知性(intellect)」は、人それぞれで異なる批判的、創造的、思索的側面の強い能力です。知能の獲得は「受動的」にも可能ですが、知性の獲得には「能動的」要素が必要となり、個人の力量が問われます。
 情報端末から容易に得られる大量の「知能情報」は、どんなに貴重なものであっても全ては過去の知識の集積にすぎず、プロフェッショナルに求められる「思考力」「判断力」「表現力」とは次元の異なるものです。一方で、「健全な反逆精神」と「論理に基づく批判精神」こそは、人の「知性」の根源であり、そこから導かれる大胆な問いかけの中にこそ、他人にはできない独自の回答や新たな発見があると信じます。これからの人生、自己の「知性」を育み、夢や希望の実現に向けた努力、挑戦を重ねてください。

 第二は、一人の人間として、人との直接の語り合い・ふれあいを大切にしていただきたいという点です。
 人は一人だけで生きていくことはできません。人との結びつき、連携の中で生まれる個の力を集約できる総合力、それは人工知能には決して真似できない人間の力です。社会の脆さや歪みを補うのは人の力です。思いやりや倫理観、そして独自の思考性や精神性などは、人との語り合い、ふれあいの中でこそ生まれてきます。メールではなく、電話でもなく、相手の顔、目を見て直接に交わす会話・対話こそが必要です。特に、意見の相違を語り合う「対話」では、単なる社会的なコミュニケーション能力だけではなく、人への寛容さや優しさの交換が求められます。
 皆さん、一人の人間として、人の思いを受け入れ、人を愛する気持ちを持ち、互いを理解できる人間関係を築いてください。

 第三の点は、私がこれまでの人生で最も大切にしてきた思い、「遊びの心」についてです。
 遊びの原点とは、「知能を有する動物が、生活的・生存上の実利の有無を問わず、心を満足させることを主たる目的とし、自らが望んで行う行動」とされています。私は「遊び」と「学び」は表裏一体のものであり、「遊び」の中にこそ、人それぞれが育む個人としての「文化」「知性」があると考えています。

 変化する社会の中で、国立大学への期待はあらゆる分野で益々高まっています。富山大学においても、4月の新年度からは、教養教育の五福キャンパスでの一元化、新たな「都市デザイン学部」の開設があり、さらなる改革も順次計画しています。富山大学は、これからも、富山県における地域活性化の中核的拠点としての役割を担いながら、新しい業績や情報を世界に発信する役割も果たして参ります。
 皆さんは、富山大学で同じ時代に学び、過ごした同窓の仲間です。卒業生として、互いに連携の輪を広げていってください。また、これからも母校を見守り、富山大学発展のためのご意見ご支援をお寄せください。
 皆さんが、素晴らしき人生を送られることを祈念し、学長告辞と致します。

平成30年3月23日
富山大学長 遠藤 俊郎