未来を拓く:おもしろい授業・おもしろい研究

近代フランスの犯罪、文学、社会

掲載内容は当時のものです。

何をおもしろいと感じるかは、人それぞれです。けれどもおもしろさを人に伝えられてはじめて、それは趣味ではなく研究と呼んでもらえるのかもしれない。そんな考えもあって、2019年、私は一冊の本を出版しました。

梅澤礼先生が御執筆された本の表紙

この本は、フランスが近代社会を築き上げてゆくなかで、少数の異質な人々をどのように排除してきたのか、その排除を科学の名の下でどのように正当化してきたのか、そしてそのことに作家たちがどのように抵抗してきたのかを追ったものです。歴史、文学、犯罪学、精神医学など、複数の領域を横断する研究であることを評価していただき、出版の年には渋沢・クローデル賞を、翌2020年にはサントリー学芸賞を受賞することができました。

第36回渋沢・クローデル賞表彰式の様子

第36回渋沢・クローデル賞表彰式の様子

そしていま、私はエクトール・マロについての調査を開始しています。マロは児童文学『家なき子』で知られる作家ですが、大人向けの作品も残しており、そこでは異質さゆえに近代社会を追われてゆく人々が数多く描かれているのです。

マロの作品を通して社会と人間のあり方を問う。これもまた、いつか「おもしろい研究」と呼んでもらえるように、論文執筆や翻訳にいそしむ毎日です。