なぜ棚から商品が消えないのか? ― 数学で考える在庫のしくみ
私たちの身の回りにある商品は、「必要なときに店にある」ことが当たり前のように感じられます。しかし、その裏では、次のような難しいバランス調整が常に行われています。
- 多く仕入れすぎると在庫が余ってしまう
- 少なすぎると売り切れてしまう(欠品)
この研究は、卸売業を例にして、「どの商品を、いつ、どれくらい発注すればよいのか」を、数学を用いて考えたものです。なお、この研究では、共同研究を目的として北陸コンピュータ・サービス株式会社(HCS)より提供いただいた実際のデータを用いて分析を行っています。
ポイント1:商品によって「売れ方」が違う
実際の売上データを解析することで、商品重量と売れる頻度の関係において特徴がみられること、また、対象商品全体が2つのグループにはっきり分かれることを発見しました。そこで、この研究では商品を、比較的頻繁に売れるグループと、売れる日がまばらなグループに分けて、各グループに適した売り上げ予測のアルゴリズムを適用することで在庫管理の最適化を試みました。
ポイント2:「安全在庫」という考え方
売れ行きは毎日変わるため、予想より多く売れる日もあります。そのため、「最低限これだけあれば安心」という在庫量(安全在庫)を、数式を使って決めます。この研究では、「この在庫量があれば、〇%の確率で売り切れを防げる」という考え方を用いて、安全在庫を決定しています。
ポイント3:数学で「一番よい発注」を探す
発注には、まとめて一定量以上注文しなければならないことや、重たい商品ばかりだとコストがかかることなど、現実的な制約があります。そこで、これらの条件をすべて考慮しながら、在庫が増えすぎず、かつ欠品も起きにくい発注量を、数学的な最適化によって計算しました。
結果
この方法をHCS提供の実際のデータで試したところ、人間が経験的に商品の管理をするよりも、欠品が大幅に減ることが確認されました。
まとめと今後の課題
この研究は、身近な「在庫管理」という問題を、実データ・確率・最適化という道具を使って解決した研究です。つまり、「データと数学で社会の困りごとを解決する」研究といえます。今後はこの手法を発展させ、いわゆる「バイトシフト問題」など、別の身近な課題にも挑戦する予定です。

図は,対数変換した各商品の売上量の平均とゼロ区間の長さの平均の関係の散布図を示し、点の色で各商品の重量を示している。図より、重量が小さい商品ほど濃い色で表し、これらの商品は散布図の左上に集中していることがわかる。特に、重量が0.2 kg 以下の商品は明確に集まっており、0.2 kg 以上の商品とは異なる分布傾向を示している。この結果から、0.2 kg 付近を境に商品の特徴量の分布構造が変化している可能性が示唆される。
富山大学大学院 理工学研究科 理工学専攻 修士論文「在庫管理における最適化問題」髙橋柊麻より転載
- 教員名
- 専門/数学
- 学部・研究科/理学部
- 関連リンク
- 研究室ホームページ:http://www3.u-toyama.ac.jp/akiyama/
- 北陸コンピュータ・サービス株式会社:https://www.hcs.co.jp





