未来を拓く:おもしろい授業・おもしろい研究

紙ナノ? 金属ナノ?

掲載内容は当時のものです。

金属を持った時の皆さんの印象ってどうですか? 重い、冷たいとか。私の研究室では、新しい金属材料、とくに軽量なアルミニウム合金の研究を富山大学工学部開設以来、ずーっと行っています。アルミニウムは比重が鉄より軽い金属なので「軽金属」と呼ばれます。

飽きないのかとよく言われますが、そんなことはありません。富山県はアルミサッシに代表されるようなアルミニウム製品の生産と、それらの関連産業の一大集積地です。最近はSDGsやゼロカーボン社会という地球環境保全の意識が今までになく注目されています。同様の社会現象は1990年代初頭にも起こりましたが、今回は例えば自動車もガソリン車から電気自動車への転換などが具体的目標に挙げられました。AIやセンサー技術との連携によって、例えば自動車は軽いアルミ素材にすることで、電池や水素燃料による長距離走行が可能になります。

私の研究室では、試行錯誤の結果、不可能と言われていたセルロースナノファイバーというナノメートル(nm)サイズのいわば紙の繊維50%と、アルミニウム50%のハイブリッド材を作製することに成功しました。アルミの比重は2.7ですが、ハイブリッド化することで2.0以下になります。これは紙? アルミなのでしょうか? まだまだ面白い発明や発見が材料工学分野にはたくさんあります。

セルロースナノファイバー40%、アルミ60%のハイブリッド材

皆さんが日ごろ使われている身近な製品も、今一度よく眺めて頂き、私たちの未来のために改良の余地がないか一緒に考えていきませんか?

松田 健二 先生