未来を拓く:おもしろい授業・おもしろい研究

ヘルン文庫蔵書調査から始まるラフカディオ・ハーン(小泉八雲)研究

掲載内容は当時のものです。

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は「耳なし芳一」など日本の伝承を世界に紹介した作家として知られていて、数多くの書物を収集していました。それが今日富山大学附属図書館に収蔵されているヘルン文庫です。

私はこれらの書物に残された書き込みを解読しながら、ハーンの作品や思想にそれがどのような影響を与えているか解明を試みています。仏文学専攻の私がなぜハーンに興味を持ったかというと、ヘルン文庫の洋書のおよそ3分の2にあたる719冊は仏語で書かれたもので、ハーンにとって仏語は知識を得るための重要な手段であったということが分かってきたからです。

蔵書の書き込み調査によって、米国時代にはハーンがそれらの書物を新聞のコラム執筆や小説の翻訳の参考にしていたこと、来日後には帝大での講義の準備をしていたことなども分かってきました。来日直前にはハーンはマルティニーク(仏領西インド諸島)に滞在して民話の聞き取り調査を行っています。すなわちハーンは日本のみならず、米国、フランス語圏にも影響を及ぼした作家であることがだんだん解明されてきたのです。このような世界市民としてのハーンの視野の広さ、作品の豊かさを皆様に紹介していきたいと考えています。