未来を拓く:おもしろい授業・おもしろい研究

認知症治療法の開発を目指して

掲載内容は当時のものです。

高齢化社会が進むなか、深刻な社会問題となっている病気の一つが「認知症」です。昔の思い出や身近の出来事まで忘れてしまう恐ろしい病気ですが、現在のところ、病気の進行を遅らせる対症療法薬しかないのが現状です。つまり、認知症になった後から記憶力を取り戻すような治療薬はありません。

認知症を治すことが困難である大きな原因として、物事を覚えたり考えたりすることに重要な脳の神経ネットワークが、さまざまな要因でダメージを受けてしまうことが挙げられます。損傷された脳の神経は再生されにくい性質があるため、失った記憶を蘇らせることは難しいと考えられています。

図1

そこで私たちの研究室では、脳の神経を修復することができる薬物を和漢薬から探索し、認知症を“治療”する方法を開発するための研究をしています。モデル動物を用いた基礎研究において有効な薬物を見出した後は、ヒトの患者さんで臨床試験を行い、機能性表示食品をはじめとした製品開発へとつなげています。私たちは、薬の開発に加えて、脳の神経がどのようなメカニズムで修復されうるかという大きな謎について、神経科学の視点からも解明しています。

図2

認知症を治すことができる新しい時代へ。伝統薬物と神経科学の融合を通して、人々の健康維持に貢献できるような研究を今後も行っていきます。

楊 熙蒙 先生