抗がん薬オキサリプラチンによって誘発される末梢神経障害に対する治療薬・予防薬の開発に成功
本研究のポイント
・下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide、 以下PACAPと省略)※1が抗がん薬オキサリプラチンによって誘発される冷アロディニア※2に関与していることを明らかにしました。
・PACAPの受容体であるPAC1受容体に対する低分子拮抗薬PA-8が、オキサリプラチン誘発冷アロディニアに対し、治療効果と予防効果を示すことを明らかにしました。
研究概要
富山大学学術研究部工学系 生体情報薬理学研究室の髙﨑一朗准教授は、同大学の工学系生体機能性分子工学研究室の豊岡尚樹 教授、岡田卓哉 准教授、理学系 中町智哉 講師、および鹿児島大学との共同研究によって、オキサリプラチンを投与したマウスに誘発される冷アロディニアに脊髄後角におけるPACAP-PAC1受容体シグナルが密接に関与することを明らかにしました。また、同グループが開発に成功したPAC1受容体特異的低分子拮抗薬PA-8は、冷アロディニアに対し治療効果を示すこと、さらにはオキサリプラチンの投与する前にPA-8を予め投与しておくと冷アロディニアの発症を抑えることを発見し、予防薬としても有望であることを見出しました。
本研究成果は、「The Journal of Pain」に 2024 年11月28 日(木)(日本時間)にオンラインで掲載されました。
用語解説
※1)下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide、 PACAP)
1989年に、共同研究者である宮田篤郎博士(鹿児島大学名誉教授)により、ラット下垂体細胞のcAMP上昇作用を指標とし、ヒツジの視床下部より単離・同定された38個のアミノ酸からなる神経ペプチド。中枢神経系だけでなく末梢神経系にも広く分布する多機能性ペプチドである。
※2)アロディニア
異痛症ともいう。通常では痛みとして感じない程度の刺激でも痛みを感じてしまう感覚異常のこと。たとえば、服が擦れただけでも痛く感じたり、冷たいものが強く感じられたりする。
研究内容の詳細
抗がん薬オキサリプラチンによって誘発される末梢神経障害に対する治療薬・予防薬の開発に成功[PDF, 607KB]
論文情報
論文名
Spinal pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide and PAC1 receptor signaling system is involved in the oxaliplatin-induced acute cold allodynia in mice.
著者
Ichiro Takasaki*、 Ryota Nagashima、 Takahiro Ueda、 Yuya Ashihara、 Tomoya Nakamachi、 Takuya Okada、 Naoki Toyooka、 Atsuro Miyata、 Takashi Kurihara (*:責任著者)
掲載誌
The Journal of Pain
DOI
https://doi.org/10.1016/j.jpain.2024.104751
お問い合わせ
富山大学 学術研究部工学系
准教授 髙﨑 一朗
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