外来魚(コクチバス)が定着している生態系での水草による外来魚影響緩和ポテンシャル
本研究のポイント
・コクチバスが定着している長野県野尻湖では水草が多い環境ほど魚類(在来・外来どちらも)の密度が高い。
・水草が多い環境では小型魚の採餌回数は減少するが、捕食回避のため水草を有効に利用していることが示唆された。
研究概要
外来魚(コクチバス)が1990年代から定着している長野県野尻湖において魚類の捕食―被食関係に及ぼす水草の影響を調べました。野尻湖では1970年代に放流されたソウギョの採食圧のため水草の少ない状態が継続していたが、近年回復に向かっています。そこで、これらの水草が魚類にどの様な影響を与えているのかを、ラインセンサスとビデオ録画による魚類の行動分析により明らかにしました。全体として、水草密度は魚類密度を増加させる影響を与えていました。一方、魚類の行動分析により、水草密度はすべての魚種の採餌回数を減少させる影響を与えていたことが分かりました。ただし、潜在的捕食者(主にコクチバス)の存在下では、小型の当歳魚(ヨシノボリとブルーギル)に顕著な行動の変化が観察されました。両種ともに当歳魚は、捕食者不在時には魚体を水草の上に浮かせて頻繁に中層で採餌しましたが、捕食者存在下では水草に近づき、水草の茎の表面を低頻度で採餌する行動に移行しました。これらの結果から、水草が多い環境では魚類の採餌回数は減少するが、とくに当歳魚などの小型魚類の捕食回避に有効であることが示唆されました。
本研究成果は、「Freshwater Biology(掲載誌)」に 2025年 5月22日18時01分(日本時間)に掲載されました。
研究内容の詳細
外来魚(コクチバス)が定着している生態系での水草による外来魚影響緩和ポテンシャル[PDF, 453KB]
論文情報
論文名
Benefits of Aquatic Vegetation for Fish in an Ecosystem Dominated by an Invasive Piscivore
著者
Miles I Peterson(富山大学学術研究部理学系、研究推進機構サステイナビリティ国際研究センター)、Yoichi Kondo(野尻湖ナウマンゾウ博物館)、Naoya Wada(富山大学研究推進機構サステイナビリティ国際研究センター)、Yoshiaki Tsuda(筑波大学生命環境系/山岳科学センター菅平高原実験所)、Satoshi Kitano(長野県諏訪湖環境研究センター)
掲載誌
Freshwater Biology
DOI
https://doi.org/10.1111/fwb.70045
お問い合わせ
富山大学学術研究部理学系
助教 ピーターソン マイルズ イサオ
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