柔らかい物質と堅い物質を混ぜると 強靭な物質ができる理由を理論的・数値的に解明 ~多様な強靭材料開発への貢献に期待~
ポイント
・柔らかい物質と堅い物質を混ぜると、堅くて壊れづらい強靭な物質ができる仕組みを解明。
・強靭な物質を作るための最も有効な柔らかい物質と堅い物質の混合比を明らかに。
・強靭な人工軟骨、ゴム、セラミックスなどの多様な材料開発への貢献が期待。
概要
北海道大学大学院先端生命科学研究院 先端融合科学研究部門の田 富成研究員と龔 剣萍教授、富山大学学術研究部理学系数理情報学プログラムの佐藤勝彦特命教授らの研究グループは、物質が強度(堅さ)と靭性(壊れづらさ)とを同時に持つための仕組みを、線形弾性体モデルと数値計算とによって解き明かすことに成功しました。この理論によって、何故、柔らかい物質と堅い物質とを混ぜると強靭な物質*1ができるのか、またどのような比で混ぜると最も強靭になるのかということが明らかになりました。得られた知見によって様々な強靭な物質を作成する工程が著しく簡略化される可能性があります。強靭な人工軟骨、ゴム、セラミックス材料などの作成に繋がり、再生医療から工業材料に至るまで、広範な分野への貢献が期待されます。
なお、本研究成果は日本時間2025年7月3日(木)公開の「The Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」にオンライン掲載されました。
用語解説
*1)強靭な物質
強度と靭性を兼ね備え、物質に亀裂が入ったとしても簡単には壊れない物質のこと。骨や真珠層などがこれに当たる。
研究内容の詳細
柔らかい物質と堅い物質を混ぜると強靭な物質ができる理由を理論的・数値的に解明~多様な強靭材料開発への貢献に期待~[PDF, 945KB]
論文情報
論文名
Fundamental toughening landscape in soft-hard composites: Insights from a minimal Framework
(ソフト-ハード複合材料における基本的な強化メカニズム:最小限のフレームワークからの洞察)
著者
田 富成1、佐藤勝彦2,*、Yong Zheng3、Feixue Lu4、龔 剣萍1,4*(1北海道大学大学院先端生命科学研究院、2富山大学学術研究部理学系数理情報学プログラム、3西安交通大学機械工程学院、4北海道大学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)、*責任著者)
掲載誌
The Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS、米国科学アカデミー紀要)
DOI
http://doi.org/10.1073/pnas.2506071122
お問い合わせ
富山大学学術研究部理学系
特命教授 佐藤勝彦(さとうかつひこ)
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