有機農法によって作られる土壌の炭素・窒素特性が微小節足動物の生息密度を高める
ポイント
- 土壌中における有機物の分解者として重要な役割を担っている微小な節足動物の生息密度が、有機農法によって高まることを富山県内の耕作地を対象とした実地調査により明らかにしました。
- 窒素に対する炭素比が高く、有機態窒素に富んだ土壌では、微小節足動物の生息密度が高くなる傾向を検出しました。
- 炭素と窒素の両方を供給する有機物に富んだ土壌が、豊富な微小節足動物群集を維持する上で最適な条件を作り出していることを示唆しています。
概要
有機農法は、農業生態系における土壌劣化を防止する上で有効であることが広く認められています。しかし、有機農法が土壌の生物群集に及ぼす影響を、作付の異なるさまざまな耕作地間で比較した研究は十分になされていません。富山大学大学院理工学教育部博士後期課程のハック エムディ アリフルと峯村友都、学術研究部理学系の佐澤和人講師、倉光英樹教授、和田直也教授の研究グループは、富山県内の水稲、大豆、野菜畑において、土壌微小節足動物の生息密度を調べ、有機栽培と慣行栽培の耕作地土壌を比較しました。一般化線形混合モデル(GLMM)※1)を用いた解析の結果、有機農法と野菜の作付けはともに、微小節足動物の生息密度に有意な正の影響を与えていることが分かりました。また、土壌の炭素-窒素(CN)比と有機態窒素含有量との間に正の交互作用が検出され、有機物が濃縮された土壌は微小節足動物にとって適した環境であることが示されました。この結果は、農業管理方法、作付体系、土壌養分特性が総合的に土壌微小節足動物の生息密度に有意な影響を与えていることを示しています。
本研究成果は、米国農学会、米国作物学会、米国土壌学会の3学会が合同で発行している国際誌「Agricultural & Environmental Letters」に 2025年10月1日(水)(日本時間)に掲載されました。
用語解説
※1)一般化線形混合モデル(GLMM)
一般化線形混合モデル(GLMM)とは、統計学において一般化線形モデル(GLM)を拡張した統計解析モデルであり、GLMとは、モデルに組み込んだ要因だけでは説明しきれない残差を任意の確率分布とした線形モデルである。GLMMは、固定効果に加えて変量効果を考慮している。変量効果は通常、正規分布に仮定される。本研究では、1つの耕作地で3つの土壌試料を採取しており、このクラスター構造を変量効果に組込みモデルを構築した。
研究内容の詳細
有機農法によって作られる土壌の炭素・窒素特性が微小節足動物の生息密度を高める[PDF, 394KB]
論文情報
論文名
Interaction of Organic Nitrogen and C/N Ratio Enhances Soil Microarthropod Abundance
著者
Md Ariful Haque, Yuto Minemura, Kazuto Sazawa, Hideki Kuramitz, Naoya Wada*
*責任著者:富山大学学術研究部理学系(サステイナビリティ国際研究センター) 教授 和田直也
掲載誌
Agricultural & Environmental Letters (Wiley)
DOI
https://doi.org/10.1002/ael2.70034
お問い合わせ
富山大学学術研究部理学系(サステイナビリティ国際研究センター)
教授 和田 直也
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