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カンナビノイド1型受容体による記憶制御のメカニズム解明

ポイント

  • マウスの前頭前皮質 (PFC) (注1) におけるカンナビノイド1型受容体 (CB1R) (注2) が物体位置記憶 (注3) の獲得に関与することを発見しました。
  • そのメカニズムにはGABA (注4) 放出の制御が関与していることが示唆されました。
  • この発見は、大麻による記憶障害の新たな治療戦略の開発に繋がる可能性があります。

概要

 富山大学学術研究部薬学・和漢系 新田淳美教授と医学薬学教育部・博士後期課程 徳竹伯洸大学院生の研究グループでは、マウスPFCにおけるCB1RがGABAの放出抑制を介して、記憶獲得を制御することを明らかにしました (図1)。本研究は、京都大学および自治医科大学との共同研究です。
 大麻は世界中で使用されている物質であり、その使用によって記憶障害を引き起こすことが報告されています。我々は、大麻に含まれる有効成分の作用点の一つであるCB1Rに着目し記憶障害のメカニズムを探索しました。本研究結果から、PFCにおけるCB1RがGABAの放出抑制を介して記憶の獲得を制御することが示唆されました。
 今回の研究成果は、大麻使用による精神障害に対する新たな治療標的となる可能性があります。
 本研究成果は、「Behavioral and Brain Functions」に 2025 年 11月 4日(火)に掲載されました。

図1

用語解説

注1)前頭前皮質 (PFC)
実行機能や記憶などと関与が知られている脳領域。

注2)カンナビノイド1型受容体 (CB1R)
大麻の主要な精神活性物質であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール (THC)の作用点であり、その活性化によって神経細胞終末部からの神経伝達物質放出を抑制する。

注3)物体位置記憶試験
マウスが物体の空間的な位置関係を記憶する能力を測定する認知機能試験。

注4)GABA
神経細胞の終末部から放出される抑制性の伝達物質。

研究内容の詳細

カンナビノイド1型受容体による記憶制御のメカニズム解明[PDF, 300KB]

論文情報

論文名

Cannabinoid Type 1 Receptors in the Mice Prefrontal Cortex Regulate Object Location Memory Acquisition via GABAergic Neurons.

著者

Tomohiro Tokutake, Jun Yokose, Yusuke Yano, Yuki Shigetsura, Shin-Ichi Muramatsu Atsumi Nitta

掲載誌

Behavioral and Brain Functions

DOI

https://doi.org/10.1186/s12993-025-00306-w

お問い合わせ

富山大学学術研究部薬学・和漢系
教授 新田 淳美

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