能登半島北東部の温泉・深層地下水の定期観測が深部流体の起源と令和6年能登半島地震に先立つ変動を明らかにした
ポイント
- 能登半島北東部の温泉・深層地下水を定期的に調査し、ヘリウム同位体比(3He/4He比)※1)の時間変動を観測しました。
- 3He/4He比のデータと地震波トモグラフィ※2)を組み合わせることで、マントルから上昇した流体が能登半島北東部の群発地震に関与したことを明らかにしました。
- 3He/4He比データを用いて地殻の体積ひずみを推定しました。計算された体積ひずみは、令和6年能登半島地震に先立って変動しました。
概要
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震以前から、能登半島北東部では長期的な群発地震が観測されていました。富山大学・高知大学・東京大学・金沢大学などからなる研究チームは、2022年から定期的に能登半島北東部の温泉・深層地下水を調査して、3He/4He比の時間変動を観測しました。観測された高い3He/4He比と地震波トモグラフィは、マントルから上昇した流体が群発地震に関与したことを示唆しています。また、令和6年能登半島地震に先立つ3He/4He比の低下は、ひずみの変化に伴い変形した帯水層の岩石からの脱ガスに起因するものと考えられます。
本研究成果は、Nature Communications誌にて 2025年11月26日(水)(日本時間)に掲載されました。

用語解説
(※1)3He/4He比
ヘリウムの安定同位体比をこのように表します。ヘリウムには質量数3と4の安定同位体が存在し、主に3Heは地球形成時に宇宙空間から固体地球内部に取り込まれた始原的な成分、4Heはウランやトリウムの放射壊変で生成されたα粒子です。3He/4He比はマントルでは高く、地殻では低いため、温泉・地下水中の3He/4He比を測定することによってヘリウムの起源を解析することができます。
(※2)地震波トモグラフィ
地震波の到着時刻データを用いて、地下の地震波速度構造を推定する手法です。地震波速度は物質の密度などに応じて変動するため、地下の構造を調査する上で有用です。
研究内容の詳細
能登半島北東部の温泉・深層地下水の定期観測が深部流体の起源と令和6年能登半島地震に先立つ変動を明らかにした[PDF, 837KB]
発表詳細
題目
Helium isotope anomaly in groundwater prior to the 2024 Noto Peninsula earthquake
著者
Takanori Kagoshima, Yuji Sano, Naoto Takahata, Yume Kawamoto, Tomo Shibata, Ying Li, Tomoaki Morishita, Yoshihiro Hiramatsu, Junichi Nakajima
雑誌名
Nature Communications
DOI
https://doi.org/10.1038/s41467-025-65717-9
発表日時
2025年11月26日
お問い合わせ
富山大学 学術研究部理学系
助教 鹿児島 渉悟
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