鎮痛薬使用に伴うがん患者の便秘予防に対するナルデメジンの有効性を実証
概要
がん患者にとって、痛みを和らげるために用いるモルヒネなどのオピオイド※1(強い鎮痛薬)は非常に重要です。しかし、オピオイドを使用すると便秘が生じることが多く(オピオイド誘発性便秘※2)、これが生活の質を低下させる要因となります。オピオイド使用に伴う便秘症は非常に一般的で、一度起こると自然には治らないことが多いため、適切な対策が必要です。
本研究では、がん患者が新たにオピオイドの使用を開始する際に、便秘の治療薬として用いられるナルデメジンという薬の併用が、便秘の予防にも効果があるかどうかを確認することを目的としました。ナルデメジンは腸の動きを正常に保つことで便秘を防ぐ効果が期待されています。本研究には、99名のがん患者が参加しました。患者はナルデメジンを投与されたグループとプラセボ(偽薬)を投与されたグループに分けられました。14日間にわたって投与したところ、ナルデメジンを使用した患者の64.6%が便秘の症状を示さなかったのに対し、プラセボを使用した患者では17.0%でした。また、ナルデメジンを使用したグループでは、生活の質の向上や吐き気の予防効果も認められました。
本研究結果から、がん患者が、痛みを和らげるためにオピオイドを使う際に、ナルデメジンを一緒に使うことで、痛みを緩和しながら快適に生活できることが分かりました。
用語解説
(注1) オピオイド
がんの痛みを和らげるために使われる痛み止めの薬。モルヒネやオキシコドンなどの種類があり、これらの薬は、脳や神経に働きかけて痛みを感じにくくする効果がある。一方で、副作用として便秘や吐き気などが起こることがある。
(注2) オピオイド誘発性便秘症
オピオイドによって引き起こされる便秘のこと。オピオイドは強い鎮痛効果があるが、同時に腸の動きも鈍くしてしまうため、便が出にくくなることがある。このような便秘は、がんの痛みを緩和するためにオピオイドを使用する患者によく見られ、生活の質を低下させる原因となることが多い。
研究内容の詳細
鎮痛薬使用に伴うがん患者の便秘予防に対するナルデメジンの有効性を実証[PDF, 820KB]
論文情報
論文名
Naldemedine for opioid-induced constipation in patients with cancer: A multicenter, double-blind, randomized, placebo-controlled trial
(ナルデメジンのオピオイド誘発性便秘症の予防効果について)
著者
J. Hamano, T. Higashibata, T. Kessoku, S. Kajiura, M. Hirakawa, S. Oyamada, K. Ariyoshi, T. Yamada, T. Morita et al.
掲載誌
Journal of Clinical Oncology
掲載日
2024年9月10日
DOI
https://doi.org/10.1200/JCO.24.00381