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妊娠中のハウスダスト忌避行動と子どもの精神神経発達との関連について

エコチル調査富山ユニットセンター 松村 健太 特命助教らのグループは、妊娠期間中にハウスダスト(※1)忌避行動(床と布団への掃除機の使用、布団干し、防ダニ布団カバーの使用)が少ないほど、出生した子どもの精神神経発達が遅めであるという判定が増えることを明らかにしました。

この結果から、妊娠中にハウスダスト忌避行動を多くすると、子どもの精神神経発達にプラスに影響する可能性が示唆されました。しかし本研究では、ハウスダスト忌避行動の頻度を調べたのみで実際のハウスダストそのもの(成分、量など)を測定しておりません。したがって、妊娠中のハウスダスト忌避が子どもの発達に有効かを明らかにするためには、さらなる研究が必要です。

この研究成果は環境科学と公衆衛生学の専門誌「International Journal of Environmental Research and Public Health」に、2021年4月19日付でオンライン掲載されました。

参考図:ハウスダスト忌避行動と、生後6か月時、1歳時の精神神経発達の関連
最も頻度が少ない集団を1とした時の、オッズ比(※2)95%信頼区間(※3)を示しています。1より低いものは、発達が遅れていると判定される子が少ないということを示しています。

用語解説

※1 ハウスダスト

ハウスダストを日本語訳すると「家の中のホコリ」となりますが、ホコリの中でも特に1mm以下の大きさのものを指しています。このような小さなホコリは、衣類などの繊維のクズ、ダニの死がい・フン、砂ぼこり、花粉などさまざまなものがあります。また、これらに、鉛、難燃剤、多環芳香族炭化水素などの有害化学物質が含まれています。

ハウスダストは吸引(呼吸)だけでなく、経口によっても体内に入ります。これまでは主にぜん息や鼻炎などアレルギーの原因として知られておりましたが、近年は精神神経発達への影響も懸念されています。

※2 オッズ比

オッズとは、ある現象の起こりやすさを、ある現象が起こる回数(人数)÷ある現象が起こらない回数(人数)として表した値であり、オッズ比とは、この値の比のことです。

本研究では、最も頻度が少ないグループのオッズを基準(1)とすると、ほかのグループでは「発達が遅め」の子の出現しやすさが「何倍(いくつ)」になるかを示すために使っています。各グループのグラフ上に示された値(=オッズ比)が、1より大きいと起こりやすい、1より小さいと起こりにくいと言えます。

※3 95%信頼区間

調査の精度を表す指標で、精度が高ければ狭い範囲に、低ければ広い範囲となります。

プレスリリース [PDF, 654KB]