農薬成分が難病治療薬の候補に!
本研究のポイント
・651種類の農薬関連化合物を選定し、7つの化合物が血漿タンパク質トランスサイレチン(TTR)の異常凝集を抑制することを発見した。
・除草剤成分アイオキシニルやアクロニフェンはTTRに対して高い結合親和性を示し、異常凝集を効率よく抑制した。
・本研究で発見した化合物は、希少難病アミロイドーシス治療薬として期待される。
研究概要
富山大学学術研究部薬学・和漢系 構造生物学研究室の横山武司 助教は、水口峰之 教授、量子科学技術研究開発機構の藤原悟 博士、富山大学学術研究部工学系 生体機能性分子工学研究室の豊岡尚樹 教授および岡田卓哉 准教授との共同研究で、農薬関連化合物の中から希少難病アミロイドーシス治療薬の候補となる化合物を発見しました。血漿タンパク質トランスサイレチン(TTR)※1は異常に凝集することで、毒性のアミロイド線維を形成し、アミロイドーシス※2を引き起こします。本研究では、7つの農薬関連化合物がTTRの異常凝集を抑制することを確認しました。その中でも、除草剤成分アイオキシニル※3やアクロニフェン※4はTTRのアミロイド線維形成を効果的に阻害しました。これらの化合物は新しいアミロイドーシス治療薬として有望です。
本研究成果は、医薬品化学の分野で高く評価されている学術誌「Journal of Medicinal Chemistry」に 2025 年 1 月 6 日(月)(日本時間)にオンラインで掲載されました。
用語解説
※1)トランスサイレチン
血漿に多く含まれるタンパク質で、甲状腺ホルモンを体中に運搬する役割をもちます。生体内での役割とは別に、アミロイド線維を形成する特徴があり、これによってアミロイドーシスを引き起こされます。
※2)アミロイドーシス
異常なタンパク質がアミロイド線維を形成し、これが臓器に沈着することで機能障害を起こす病気群です。TTRアミロイドーシスでは、TTRがアミロイド線維に変化し、末梢神経、心臓、眼などに沈着して障害を引き起こします。また、アルツハイマー病はアミロイドβが原因となり、脳に限局したアミロイドーシスです。
※3)アイオキシニル
農業で使用される除草剤で、特に広葉雑草の駆除に効果的とされています。光合成の電子伝達系を阻害することにより、雑草を枯死させると考えられています。
※4)アクロニフェン
農業用の除草剤成分で、主にイネ科作物の影響を与えずに広葉雑草を駆除する目的で使用されます。
研究内容の詳細
論文情報
論文名
Repurposing of Agrochemicals as ATTRv Amyloidosis Inhibitors
著者
*Takeshi Yokoyama, Satoru Fujiwara, Kai Nishikubo, Mineyuki Mizuguchi, Yuko Nabeshima, Naoki Toyooka, Takuya Okada, Yusuke Nakagawa (*:責任著者)
掲載誌
Journal of Medicinal Chemistry
DOI
https://doi.org/10.1021/acs.jmedchem.4c02221
お問い合わせ
富山大学 学術研究部薬学・和漢系
助教 横山 武司
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