TOPICS

完全切除後のT1 膀胱がんに対して 無治療経過観察が標準治療の一つとなることを証明 ~JCOG による研究成果~

ポイント

  • 膀胱がん(T1 膀胱がん)では、2 度の内視鏡での診断、治療(TURBT:経尿道的膀胱腫瘍切除術)が行われ、がん細胞の残存が認められない場合は、再発予防の目的でBCG膀胱内注入療法を行 うのが標準的治療とみなされてきました。
  • T1 膀胱がんの5 年生存割合は高く9 割を超えていますが、術後に行われるBCG 膀胱内注入療法は、多くの患者さんで頻尿や排尿痛、血尿など、日常生活に支障のある副作用が生じ、また治療時の苦痛や負担も大きいことから、より低侵襲な治療が求められていました。
  • JCOG では、2 度目の内視鏡手術でがん細胞の残存が認められない患者さんを対象に、BCG 膀胱内注入療法に対する、無治療経過観察(追加治療を行わず慎重に経過観察を行う)の非劣性を確認するランダム化比較試験を行いました。
  • 本試験の結果、無治療経過観察の患者さんの無再発生存期間は、BCG 膀胱内注入療法を受けた患者さんに劣らず、副作用も少ない傾向が確認され、無治療経過観察が標準治療の一つとなることが示されました。
  • 本試験の成果は、膀胱がん患者さんにおける標準治療に関する知見を示すものとして、医学雑誌「European Urology」に掲載されました。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院(所在地:東京都中央区、病院長:瀬戸 泰之)が中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG ジェイコグ)では、科学的証拠に基づいて患者さんに第一選択として推奨すべき最善の治療である標準治療や診断方法等を確立するため、専門別研究グループで全国規模の多施設 共同臨床試験を実施しています。この度、JCOG 泌尿器科腫瘍グループでは、膀胱の粘膜下までがんが広がっているが筋層までは達していない膀胱がん(以下、T1 膀胱がん注1)に対する術後治療の最適化を目的とした、国内多施設によるランダム化比較第III 相試験注2 を実施しました。

膀胱がんが疑われた場合には、診断と治療を兼ねて内視鏡でのT U R B T ティーユーアールビーティー (経尿道的膀胱腫瘍切除術)が行われ、T1 膀胱がんと診断された場合は、がん細胞の残存を確認するため再度TURBT (2nd TUR セカンドティーユーアール)が行われます。その後、がん細胞の残存を認めた場合は追加治療を行い、認められない 場合は再発予防の目的でBCG ビーシージーという薬剤を膀胱内に注入する治療(BCG 膀胱内注入療法注2、以下 BCG 膀注療法)を行うのが標準治療とみなされ、広く一般診療で行われていました。しかし、この再発予 防の目的で行うBCG 膀注療法がT1 膀胱がん患者さんの生存期間を延長する科学的な根拠は乏しく、 また、多くの患者さんで治療による頻尿や排尿痛、血尿など、日常生活に支障のある副作用が生じ、ま た治療時の患者さんの苦痛や負担も大きいことから、より低侵襲な治療が求められていました。 そこで本試験では、2nd TUR でがん細胞の残存を認められなかったT1 膀胱がんの患者さんを対象 に、術後のBCG 膀注療法と、追加治療を行わず慎重に経過観察をする方法(無治療経過観察)を比較 し、無再発生存期間注4(がんの再発までの期間)と副作用を評価しました。 本試験の結果、無治療経過観察を行った患者さんの無再発生存期間は、BCG 膀注療法を受けた患 者さんに比べて劣らないことが示され、生存期間も両群で差は認められませんでした。さらに、無治療経 過観察群では副作用もより少ない傾向が示されました。これらの結果から、2nd TURでがんの残存が認 められなかったT1 膀胱がんの患者さんにおいては、無治療経過観察が標準治療の一つになることが 示され、また副作用や治療負担の軽減により、患者さんのQOL(生活の質)の向上にも繋がると考えら れます。
本試験の結果は、世界的に権威のある学術雑誌「European Urology」に2026 年1 月21 日付でオ ンライン先行公開され、2026 年5 月号に掲載される予定です。
JCOG では、がん患者さんにとっての最善の医療を確立するための臨床試験を今後も行ってまいりま す。

用語解説

注1)T1 膀胱がん
がんが筋層まで及んでいない状態の膀胱がん(Ta、Tis、T1)のことです。本試験では、T1 と診断され、リ ンパ節や他の臓器への転移がない方(T1N0M0)を対象としています。なお、ステージは、TNM の3 種 のカテゴリー(TNM 分類)の組み合わせで決まります。T カテゴリーは、原発腫瘍(がんが初めに発生し た部位)にあるがん)の深達度を指し、がんがどのくらい深くまで及んでいるかを示しています。

注2)ランダム化比較第III 相試験
登録された患者さんをランダムに各治療群に割り付け治療成績を比較する、検証的な臨床試験のことで す。

注3)BCG 膀胱内注入
結核予防のためのワクチン(ウシ型弱毒結核菌)として使用されるBCG を膀胱内に注入する治療法で す。膀胱がんの治療として、標準的には、TURBT 後に6~8 回注入するBCG 導入療法と、その後1~ 3 年間継続投与するBCG 維持療法があり、リスクなどによって注入の回数や時期を判断します。細胞 傷害性抗がん薬の注入療法よりも高い治療効果が期待できる反面、副作用が出やすい治療法で、副作 用が強く出た場合には、治療を継続することが難しくなることもあります。

注4)無再発生存期間
この試験の二次登録日から、患者さんが再発なく生存している期間のことです。

研究内容の詳細

完全切除後のT1 膀胱がんに対して 無治療経過観察が標準治療の一つとなることを証明 ~JCOG による研究成果~[PDF, 568KB]

論文情報

論文名

Active Surveillance Versus Intravesical Bacillus Calmette-Guérin for High-grade T1 Bladder Cancer with Negative Second Transurethral Resection: The Randomized Noninferiority Phase 3 JCOG1019 Trial

著者

Hiroshi Kitamura, Taiji Tsukamoto, Yoshiyuki Kakehi, Junki Mizusawa, Taro Shibata, Keita Sasaki, Toshiki Tanikawa, Katsuyoshi Hashine, Kiyohide Fujimoto, Naoya Masumori, Takashi Kobayashi, Tomonori Habuchi, Takahiro Kimura, Mikio Sugimoto, Atsushi Takahashi, Hisanobu Adachi, Yoshiyuki Matsui, Shingo Hatakeyama, Akihiro Ito, Masatoshi Eto, Hiroyuki Nishiyama, on behalf of the JCOG 1019 investigators

掲載誌

European Urology (オンライン2026年1月21日)

DOI

https://doi.org/10.1016/j.eururo.2026.01.008

お問い合わせ

富山大学学術研究部医学系
腎泌尿器科学 教授 北村 寛

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国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
臨床研究支援部門 研究企画推進部 多施設研究支援室(JCOG 運営事務局)

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