TOPICS

有機ELディスプレイを新たな時代へ:分子を綺麗に並べて性能1,000倍
〜超低電圧駆動と大電流密度を誇る薄膜結晶有機EL開発に成功〜

ポイント

  • 従来の真空蒸着法では困難だった、有機EL(OLED)発光層内での巨大な「非エピタキシャル結晶薄膜(約1 mmサイズ)」の形成に成功。
  • 結晶化デバイスにより、従来のアモルファス素子と比べて電流密度が1,000倍に向上し、1.3 Vという極めて低い駆動電圧を達成。
  • シリコン半導体産業と同様に、有機EL産業のパラダイムシフトを決定づける成果。

概要

 富山大学 学術研究部工学系の森本勝大教授、本田裕哉氏(大学院理工学研究科)、中茂樹教授らの研究グループは、高い電荷輸送能を持つ有機半導体材料「ルブレン」を用い、実用的な有機発光ダイオード(OLED)の薄膜構造を維持したまま、発光層を高度に結晶化させる新技術の開発に成功しました。従来の商業用有機ELの多くは、真空蒸着時に分子がバラバラに並ぶ「アモルファス状態」の薄膜が用いられており、材料本来が持つ優れた電気的・光学的特性を100%引き出すことができませんでした。本研究では、ガラス転移温度の低い下地層と独自の「2段階熱処理プロセス」を組み合わせることで、厚さわずか50 nmのルブレン薄膜において、約1 mmもの巨大な単結晶薄膜を基板全体に形成することに成功しました。
 この結晶薄膜を組み込んだ有機ELデバイスは、従来のアモルファスデバイスと比較して同一電圧(1 V)で最大1,000倍の電流密度を示し、1.33 Vという極めて低い電圧で発光を開始しました。さらに、発光スペクトルの先鋭化(単一の遷移双極子モーメントに由来する純粋な発光)も確認されました。本研究成果は、有機EL産業における結晶OLEDへのパラダイムシフトを後押しするものであり、次世代の超高輝度ディスプレイや高電流駆動デバイスへの応用が期待されます。
 本研究は科学研究費助成事業(24K00921、25K07818)の一環として行われ、ほくぎん若手研究者助成金、日揮・実吉奨学会、マツダ財団の支援を受けて実施されました。本成果は、国際学術誌「Synthetic Metals」に2026年7月1日(オンライン公開)に掲載されました。

用語解説

※1)エピタキシャル成長
下地となる基板の結晶配列に合わせて、その上に結晶膜を成長させる技術。優れた結晶を作る一般的な手法ですが、特殊な基板が必要なため有機ELへの応用は困難でした。今回はこの手法に頼らず結晶化に成功しています。

※2)アモルファス(非晶質)と結晶
分子の並び方がランダムで不規則な状態をアモルファス、規則正しく周期的に整列している状態を結晶と呼びます。結晶状態の方が分子同士の重なりが大きくなるため、電気(電荷)が流れやすくなります。

※3)ルブレン(Rubrene)
有機半導体材料の一種。単結晶状態において、有機材料の中で最高のキャリア移動度(電荷の移動しやすさ)を持つことで知られています。しかし、通常の真空蒸着法で成膜するとアモルファス膜になりやすい性質があります。

研究内容の詳細

有機ELディスプレイを新たな時代へ:分子を綺麗に並べて性能1,000倍
〜超低電圧駆動と大電流密度を誇る薄膜結晶有機EL開発に成功〜[PDF, 835KB]

論文情報

論文名

Organic electroluminescent diodes with a thin crystalline layer

著者

Masahiro Morimoto, Yuya Honda and Shigeki Naka

掲載誌

Synthetic Metals

DOI

https://doi.org/10.1016/j.synthmet.2026.118226

お問い合わせ

富山大学学術研究部工学系 教授 森本勝大

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