集団飛行するコウモリの周波数調整メカニズムを解明
~単純な行動ルールから生まれる自己組織化行動~
ポイント
- コウモリは集団飛行中、お互いの音声の周波数差を広げることで混信を回避する。
- 行動実験により、コウモリは周囲の音声との周波数差や、受け取る音声の頻度に応じて自らの音声の周波数を調整することを発見した。
- 数理モデルを用いたシミュレーションによって、実際の集団飛行で観察される周波数調整行動を再現できた。
- 本研究の成果は、多数のロボットやドローンによる自律分散型超音波センシング技術への応用が期待できる。
概要
富山大学学術研究部医学系 システム機能形態学講座の長谷一磨(はせ かずま)助教と、名古屋大学大学院環境学研究科の依田憲(よだ けん)教授、同志社大学生命医科学部の飛龍志津子(ひりゅう しづこ)教授らのグループは、明治大学などとの共同研究で、集団飛行するコウモリで見られる「個体間の音声の周波数差が広がる」という集団レベルの行動が、各個体がシンプルなルールに基づいて行動決定を行うことによって自律分散的に生じることを明らかにしました。
自ら発した超音波音声の反響音を聞くことで周囲の環境を把握するエコーロケーション※1)を行うコウモリは、集団飛行時には他個体が発する音声に晒されますが、互いに衝突することはありません。これまで、コウモリが音声の周波数や長さ、強さ、タイミングなどを変化させ音響混信に対処する可能性が示唆されてきました。特に、複数個体飛行時の音声終端周波数※2)の調整は、混信回避に有用であると考えられている一方で、集団中のコウモリ各々がどのように終端周波数を決定するのかについては不明でした。本研究では、コウモリに搭載可能なテレメトリマイクロホン※3)によって飛行中のコウモリの音声終端周波数変化を精密に記録し、それがコウモリ型の妨害音声の終端周波数や呈示頻度にどう影響されるかを調べました。結果、コウモリは自身よりも低い終端周波数の妨害音声に対し終端周波数を上昇させ、その上昇量が呈示頻度に比例することが明らかになりました。この呈示頻度依存の終端周波数変化は、漏れ積分モデルによってよく再現されることもわかりました。また、この漏れ積分モデルを、複数個体系のシミュレーションに適用したところ、実際の複数個体飛行時に見られた終端周波数の個体差の増加をよく再現することを明らかにしました。本研究は、コウモリがシンプルな行動ルールに基づき自律分散的な終端周波数調整を行うことで、効率よく音響混信回避を行う可能性を示唆します。
本研究成果は、「Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences」に 2026 年 10 月 14 日(水)午前0時5分(BST)に掲載されます。

用語解説
※1)エコーロケーション
自ら発した音声とその反響音を聴き比べ周囲の環境を把握する行動。いくつかの動物群で見られる行動だが、イルカやコウモリは特に洗練されたエコーロケーションを見せる。
※2)終端周波数
コウモリが放射する周波数降下音の終端部分の周波数。行動学的、音響心理学、神経生理学的な観点から、エコーロケーションにおける距離計測に重要な周波数帯域であるといわれている。
※3)テレメトリマイクロホン
コウモリに搭載可能な小型無線マイクロホンシステム。飛行中のコウモリが発する超音波を正確に記録することができる。
研究内容の詳細
集団飛行するコウモリの周波数調整メカニズムを解明
~単純な行動ルールから生まれる自己組織化行動~[PDF, 532KB]
論文情報
論文名
Self-organized spectral adjustment in echolocation sounds within group-flying bats
著者
Kazuma Hase, Tasuku Miyazaki, Seiya Oka, Noriyoshi Senoo, Hiraku Nishimori, Masashi Shiraishi, Ken Yoda, Kohta I. Kobayasi and Shizuko Hiryu
掲載誌
Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences
DOI
https://doi.org/10.1098/rspb.2026.0921
お問い合わせ
富山大学学術研究部医学系
助教 長谷 一磨
- TEL:076-434-7212
- Email:


