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新型コロナウイルス感染後・ワクチン接種後の免疫の「質」と「量」が明らかに ~新型コロナ対策の取り組みを支える成果~

富山大学学術研究部医学系 微生物学講座・感染症学講座、富山県衛生研究所ウイルス部と、富山市立富山市民病院、富山大学学術研究部医学系 臨床分子病態検査学講座、大阪大学微生物病研究所による研究グループは、これまでに富山大学と富山県衛生研究所で確立した中和抗体評価法(CRNT法)を活用して、新型コロナウイルス感染症発症後とワクチン接種後の免疫獲得状況を明らかにしました。

新型コロナウイルスは、ウイルス表面にあるスパイク蛋白が私たちの細胞表面にある受容体に結合して感染します。ウイルスへ感染するかワクチンを打つと抗体ができますが、抗体には中和抗体とそれ以外の抗体があります。中和抗体を調べることで、ウイルスの感染を阻害する働き、つまり抗体の「質」を知ることができます。また、ウイルスのスパイク蛋白に対する抗体の「量」を測定する検査がありますが、日本ではまとまったデータがありません。そこで、感染後とワクチン接種後の抗体の「質」と「量」について調べました。

①検査法の判定基準を決める研究

研究体制:富山大学 微生物学講座・感染症学講座、富山県衛生研究所ウイルス部、富山市立富山市民病院、大阪大学微生物病研究所

  • 富山大学附属病院と富山市立富山市民病院で、患者さんを含め482名の協力を得て抗体検査の判定基準を定めました。
  • 抗体の「量」と「質」は相関する関係であることがわかりました。
  • 感染10日目を過ぎて抗体の「質」と「量」が基準を上回った人は、それぞれ95.8%と100%でした。
  • 従来株への抗体の「質」が確かめられた中で、約半数は変異株(英国型と南アフリカ型)への「質」が基準を下回っていました。
  • 感染10日目以降の人での抗体「量」の中央値は30.5 U/mLでした。

②ワクチン接種後の免疫の研究

研究体制:富山大学 微生物学講座・感染症学講座・臨床分子病態検査学講座、富山県衛生研究所ウイルス部、大阪大学微生物病研究所

  • ①の研究で定まった基準を利用して、富山大学附属病院職員の協力を得てファイザー社製ワクチン接種後の計740名の抗体を調べました。
  • ワクチン2回接種後100%の人で、抗体の「質」・「量」ともに確認されました。
  • ワクチン接種後に発熱などの全身反応がなかった人や、年齢が高めの人に抗体の「量」が少ない人がいますが、「質」は基準以上でした。(調査年齢 20~69歳)
  • 変異株(英国型・南アフリカ型)への抗体の「質」は従来型よりやや落ちますが基準以上でした。
  • 抗体「量」の中央値は2112 U/mLでした。

①と②の成果により、抗体の「量」は感染者よりワクチン接種後が約60倍多いことがわかりました。変異株への中和効果は従来株への効果よりやや落ちますが、ワクチン接種後に獲得される抗体の「量」が多いことで、変異株を中和する「質」が補われている可能性があります。

本研究成果は、変異株に対する免疫のできかたやワクチンの効果の理解につながり、今後の感染症対策の考え方に活かすことができます。

新型コロナウイルスに関する活動は以下のwebsiteで順次公開いたします。

富山大学学術研究部医学系 感染症学講座

詳細についてはプレスリリースPDFをリンク

プレスリリース[PDF, 462KB]