徒歩で生活できる地域に住む人に肥満は少ない(国民健康保険特定健康診査(メタボ健診)の結果より)
概要
富山大学地域連携推進機構地域医療保健支援部門(部門長:田村須賀子教授)は、富山県国民健康保険特定健康診査を2016年に受診した富山市内居住の人のうち、分析に必要な生活習慣や血液検査結果が完全であった3454人(男性1612人、女性1842人、平均年齢65.7歳)を分析したところ、「徒歩で生活できる地域に住む人に肥満は少ない」という新たな知見が得られましたので公表します。
分析は、富山県との地域連携事業である「富山県国民健康保険特定健康診査の結果と生活習慣病の関連分析」の追加分析として実施されました。Grace Koh(グレース・コー)大学院生、関根道和教授、山田正明助教らが分析しました。
徒歩で生活できる地域であるかは、Walk Scoreを用いて中学校区単位で評価しました。Walk Scoreは、その地域がどの程度徒歩で生活できるかを、0から100に点数化して評価します。Walk Scoreで0-49は「生活に車が必要である」、50-69は「ある程度徒歩で生活できる」、70-89は「かなり徒歩で生活できる」、90-100は「ほとんど徒歩で生活できる」と判断します。
分析の結果、女性では、「ほとんど徒歩で生活できる」地域に住む人の肥満の割合が11.0%であったのに対して、徒歩で生活しにくい地域になるほど肥満の割合が増加し、「生活に車が必要」な地域に住む人の肥満の割合は23.1%でした(図)。男性では、女性ほど強い関係は認められませんでしたが、「ほとんど徒歩で生活できる」地域に住む人の肥満の割合が25.8%であったのに対して、「生活に車が必要」な地域に住む人の肥満の割合は27.0%でした。
研究結果の詳細は、8月13日に英国の医学雑誌Journal of Public Healthに掲載されました。徒歩で生活できる地域は車の依存度が低く、徒歩や自転車での移動が多くなることから運動する機会が多くなり、結果的に肥満が少なくなるなどの理由が考えられます。富山市はコンパクトシティ戦略のもと徒歩で生活できる地域づくりを進めているところですが、横断研究としての限界はあるものの、地域づくりが健康づくりにも有用である可能性をデータで示した貴重な研究と考えています。