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劇症1型糖尿病に特徴的な自己免疫反応を同定

概要

本学学術研究部医学系(附属病院臨床研究管理センター)の中條大輔特命教授らは、国立国際医療研究センター(東京都新宿区)、大阪医科薬科大学(大阪府高槻市)との共同研究で、劇症1型糖尿病に特徴的な自己免疫反応を同定することに成功しました。中條教授らのグループは、3つのタイプの1型糖尿病(急性発症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病、劇症1型糖尿病)を有する患者、および非糖尿病者より血液を採取し、劇症1型糖尿病患者では、他のタイプの1型糖尿病を有する患者や非糖尿病者に比べて、インスリン産生細胞である膵島細胞を攻撃すると推測される自己免疫反応(細胞傷害性Tリンパ球活性)が強いことを明らかにしました。また、細胞傷害性Tリンパ球を活性化させる因子として、膵島細胞内に存在するIGRPという自己抗原が重要であることも併せて明らかにしました。

この結果は、これまで明らかではなかった劇症1型糖尿病における膵島細胞傷害のメカニズムの解明に資する新知見であり、新しい治療法の開発に向けた重要な一歩となりました。

本研究成果は、2021年11月19日に米国医学誌「Clinical Immunology」にオンラインで公開されました。

用語解説

1型糖尿病とは

小児期〜高齢期まで幅広い年齢で発症する糖尿病で、生活習慣病に位置付けられる2型糖尿病とは原因も治療の考え方も全く異なる疾患。インスリンを産生する膵島細胞が破壊され、インスリン分泌が極度に低下するため、現在の医学水準では生涯にわたるインスリンの自己注射(1日4〜5回の注射やインスリンポンプ療法とよばれる持続注入療法)が必要であり、その中断は生命の危機に直結する。糖尿病全体の5%未満という希少な難病で、重症化とともに生活の質(QOL)が著しく損なわれることがあり、患者や家族の身体的、精神的負担は大きい。世界的に、新規治療の開発が切望されている。

劇症1型糖尿病とは

1型糖尿病の中でも最も突然かつ急激に発症するタイプで、正常状態から膵島細胞が破壊され自己のインスリンが枯渇するまで1週間以内のケースもある。発症時にはケトアシドーシスという重篤な状況に陥ることが多く、即座かつ永続的なインスリン療法が不可欠となる。1型糖尿病の中でも早期より自己のインスリンが枯渇するため、その後のインスリン治療にも難渋する患者も存在する。