令和元年度 学位記授与式 富山大学同窓会連合会祝辞

令和元年度、学部を卒業された皆さん、そして大学院を修了された皆さん、誠におめでとうございます。また、今日の日まで、永きに渡り、支え・見守り続けてこられたご家族の皆様、諸先生方、さぞ、お喜びのことと存じます。富山大学同窓会連合会を代表して、心からお祝い申しあげます。

私は、昭和54年に、富山大学工学部電気工学科を卒業しました。当時の工学部は、高岡にあり、校舎は、木造の建物でした。冬は隙間風が吹き込むので、コートを着たまま授業をうけていたこと。雪でプレハブ校舎が、授業の始まる直前に押しつぶされたこと。夜は、高岡駅前で友達と当時、流行っていた(安い)ウイスキーのハイボールをよく飲んでいたことなど、当時の風景が鮮明に思い出されます。40年以上前の昭和の話です。

今は、令和の時代。「令和」という新元号には、「平成という時代をさらにグレードアップして、うるわしく平和な時代を築いていこう、美しい調和のとれた時代になって欲しい」、そんな願いが込められているそうです。特に「令」という文字には、「うるわしい」という意味があり、これは、美しさの最上級の言葉だそうです。そして、「精神的に豊かで気高く、人に感銘を与えるさま」、「乱れたところがなく、美しくみごとであるさま」、そんな意味があると言われています。
その令和への期待もむなしく、今、世界のあちこちで、露骨な分断や対立が起き、その制裁合戦・連鎖に、世界が振り回されています。日本人一人ひとりが、この令和に込められた意味・願いに近づけられるよう、さらに平和で、調和のとれた国、社会を築いく努力をすることが、求められているのではないでしょうか?

更に今の時代、AI・5G・IoT・自動運転などのデジタル化の波が押し寄せ、また、グローバルに人・もの・情報がつながり、私たちの身の回りの生活・環境も、これまで以上にもっと大きく変化していくことでしょう。楽しみでもあります。一方で、そういったグローバル化、技術革新の波に加え、少子高齢化、価値観多様化なども加わり、激動の時代・不確実な時代が訪れています。何に軸足をおけばいいのか、何が本命なのかが見えにくい時代になったということです。
皆さんは、これまで、多くの人に守られて生きてきました。ただ、これからの人生においては、自律して歩んでいかなければなりません。激しい変化、不確実な時代の中でも、一人ひとりが、自分の強みを生かしながらも、「変化へ対応していく力」というものが、求められる時代になっています。
しかし、反面、可能性が広がっているとも言えます。是非、「変化への対応力」を磨きつつ、夢を実現する気概と、社会の発展に貢献する高い志を持って活躍し、令和にふさわしい日本を築き上げていって欲しいと思っています。

そこで、参考になるかどうかわかりませんが、私の経験を踏まえて、皆さんのこれからの人生に活かしていただきたい、お伝えしたいことを3点、お話しさせていただきます。

1つ目は、「人」として/人間関係が大事ということ
倫理観をもち、礼節をわきまえた行動をとれることは基本です。人間関係というのは、厄介なものです。しかし、所詮人間関係の基本は、人柄・・・その人がどういう人か・・・ということ。最後の土壇場でものをいうのは、人柄なのです。他人への思いやりをもち、気配りができること、何事にも真摯に向き合い、誠実な対応・行動がとれることが、他人との信頼関係を築くのです。
そのためには、なんといっても己を知ることです。自分を俯瞰して、他人を見るように、自分を客観的に見つめ、自分の強みや自分には何が足りないのか、どこが弱いのか考え、自分を正しく認識するセンスを日々磨いて欲しいと思います。

2つ目は、目的意識をもつ/本質を掴むということ
「変化への対応力」を身に付けることは、言い換えると、「創造力を磨く、発揮する」ということかもしれません。基礎を身に付け、原理原則を理解し、目的や意味にこだわり、自分でとことん突き詰めていくと、その本質が見えてくるものです。そして、やり方が見つかったり、解決につながったりと、どんどんおもしろくなるはずです。「何事にも、好奇心や疑問をもつ」、「自分の頭で考え抜く」、「自分で問いかけて、答えを導き出していく」 という、「自分で学ぶ努力」が必要なのです。こういったプロセスで、創造力が磨かれると思っています。と同時に、これは、プロにつながる道なのです。プロは、普段からの準備を怠りません。徹底した準備をします。『桜の蕾は、冬の間に準備されている』のです。

3つ目は、チャレンジする努力をすること
これまで、みなさんは、この富山大学で多くの学びをしてきました。それは、なぜでしよう。私は、「自分の可能性を広げるため」だと思っています。企業に入っても同じなのです。
自分には、いろいろな可能性があるのに、でもそれに気づいていない、人間の才能というのは、どこに隠されているか分からないのです。努力してみて、はじめて自分に能力のあることに気づくものなのです。是非、みなさん、なりふり構わず、自分の可能性を最後の最後まで追求する自分磨きを、そして、可能性を広げる努力を続けて欲しいと思います。
そのためには、大いに、失敗してもいいから、チャレンジもして欲しいのです。
『「失敗」と書いて「成長」と読む』、『若いときに流さなかった汗は、年をとったときの涙となる』、これは、先月亡くなられた、野村監督の言葉です。結果に確実な見通しがあるわけではないことに、チャレンジすることが、夢をかなえるためにも、とても大事なことだと思っています。

結びに、皆さんのご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。学長をはじめ先生方の熱意溢れるご指導に敬意を表しますとともに、卒業生・修了生の皆様が、「人」として力強く生き、活躍されることを、そして、これからの人生が「夢と希望に満ちた素晴らしい人生」になりますことを願い、お祝いのことばとさせていただきます。本日は、誠におめでとうございます。

令和2年 3月24日
富山大学同窓会連合会 代表
工学部同窓会(仰岳会) 谷川正人