令和3年度入学式 式辞

式辞

今年の1月には、富山県は数十年振りの大雪に見舞われ、全国共通テストの実施さえ危ぶまれましたが、懸命な除雪作業のおかげで、無事実施でき、その後の前期試験、後期試験も執り行うことができました。その結果、本日、令和3年度入学式において、学部入学生1,881名、大学院入学生461名、総勢2,342名の皆さんを富山大学にお迎えすることができました。入学生の皆さん、ご入学おめでとうございます。コロナウイルス感染防止のため入学式を午前と午後の2回に分け、また御父兄や御家族の方々の参列は御辞退いただきましたが、何卒ご理解いただきたく存じます。ともあれ、昨年は新型コロナウイルス感染症のため入学式が中止となりましたので、本日ここに入学式が挙行できること、本当に嬉しく思います。

期待と緊張が入り混じる張り詰めた空気の中で、皆さんとの新しい出会いの日を迎えること、私ども大学人にとっては大きな喜び、感激であり、富山大学を代表し、心よりお祝いを申し上げます。また、ご来賓の株式会社能作 代表取締役社長 能作 克治様には、ご臨席を賜り厚く御礼申し上げます。

Since we have international students here today, I would like to give a short congratulatory message also in English.
First of all, as the president of the University of Toyama, I welcome you all and give my warmest congratulations.

富山大学は、9学部及び附属病院や和漢医薬学総合研究所など複数の教育・研究施設に、9,500名余の学生と2,500名余の教職員が集う全国有数の総合国立大学です。富山県における国立大学の歴史の原点は、現在の人間発達科学部の前身となる新川県師範学校が発足した1875年 ⁄ 明治8年に遡ります。1893年には、薬学部前身の共立富山薬学校が設置され、1900年代前半には、現在の人文学部・理学部・経済学部・工学部の各学部につながる各種学校が設立され、1975年以降には、医学・芸術文化分野の新大学が設置されてきました。その後2005年、当時の富山県内3つの国立大学が統合し、現在の富山大学が誕生しています。本年が統合後16年目となります。

Our university was established in 1875. After that, Toyama University, Toyama Medical and Pharmaceutical University and Takaoka National College were integrated in 2005.

Our university houses 9 faculties, University hospital and Institute of Natural Medicine based on the fusion of Eastern and Western medicine. There are approximately 9,500 students studying in the university.

平成30年より富山大学では、これまで3キャンパス別に行われていた学部1年生の教養教育を、すべて五福キャンパスで行う一元化を実現しています。また、昨年より、データサイエンス教育を1年生全員に必修科目として提供しています。新型コロナウイルス感染症により急速にデジタルトランスフォーメーション(DX)革命が生じ、情報系が発達し、通信機器も4Gから5Gへ変化しつつあります。このような社会情勢の中で、情報を収集し、それを解析し、課題を解決することが益々必要になってきました。データサイエンスの講義では、データのまとめ方、統計手法など基本的な事を1年生で学んでいただき、2年生以降は各学部で、学部に特化したデータサイエンスを学んでいただきます。さらに今年からNECの協力を得て、データサイエンス寄附講座を立ち上げ、企業や行政からの課題を教官と学生が解決する実践コースが始まりました。興味のある学生諸君はぜひとも参加してみて下さい。また、英語教育にも今年から力を入れ、TOEIC試験を1年生の間に2回行いますので、大学における間の上達度を確認して下さい。来年3月には、一部の学生に海外での短期留学も企画しています。

As a compulsory subject, data science education has been offered to all first-year students since last year.

It has become more and more necessary to collect information, analyze there, and solve problems using data scientific methods. In the data science lecture, students learn the basics such as the way to summarize and statistical methods in the first year, and later, students learn specialized contents in each faculty.

さて、新しい時代の改革の中で、DX革命とともに「大量生産・大量廃棄」という形態から、近い将来には、「必要なだけ生産し、リサイクルして再利用する」といった社会に急速に変化していきます。また、2050年のカーボンニュートラルに対応するため電気自動車が主流となりますが、昨年に熊本大学と富山大学が連携して先進軽金属材料国際研究機構を建ち上げ車体に軽金属を利用する研究体制を整えました。また、理学部では地熱発電、工学部ではCO2から化学繊維やペットボトルの原材料となるパラキシレンへ変換するといったカーボンニュートラル事業に取組んでいます。さらに、医学部、薬学部、和漢医薬学総合研究所、工学部では、新たな創薬にも取組んでいます。このように富山大学では常に新しいことにもチャレンジしています。

また、大学院修士課程、博士課程への入学の皆さん、おめでとうございます。大学院で学習することは、未知の課題を解決するというこれまでにない「研究」という領域です。教員と学生諸君が考え、試行し、新しいことを発見するということに挑戦します。多くの失敗から学び、改良して、新事実を見出していただきたいと思います。皆様の頑張りを期待しています。

入学生の皆様に期待を込めて大学生活で心がけていただきたいことを3点述べます。

1つ目は高校までの授業と大学での講義の違いを判って欲しいと思います。高校までは授業を受けるといった受け身の学習でしたが、大学ではこれまでの知識習得の授業に代えて、仲間で話し合い、課題を解決するという形の講義が始まります。大学での講義を通じて自らの教養を高め、自らの意志で自分自身を高めて行って欲しいと思います。

2つ目は講義で使用する資料はすべて事前に閲覧できますので、予習をした上で、復習にも活用して欲しいと思っています。さらに詳しいことをネット等で調べ、講義の中で質問やDiscussionを深めて下さい。そのため、パソコンやWi-Fiの準備をお願いします。また、コロナウイルス感染の第4波、第5波が来た際には、全面的な遠隔授業となりますので準備しておいて下さい。

3つ目は大学の中だけでなく、地域に出かけて富山の住民や企業の方々と積極的に交流して下さい。また、課外活動にも積極的に取り組んでください。また、美しい富山の自然も体験していただき、県内の色々な所へ足を運んで下さい。

There are three things that I would like you to keep in mind during your university life.

Firstly, I would like you to understand the difference between the classes you had in high school and the lectures you will have in university.

Secondly, all the documents used in the lectures are available in advance, so I hope you will prepare for the lectures and use them to review.

Lastly, I would like to ask you to actively interact not only within the university, but also with residents and business people in Toyama. In addition, I hope that you experience the beautiful nature of Toyama and visit various places.

Now, I would like to close my speech in Japanese.

これまでに述べた3点を行なうことにより、学生間のネットワークが深まり、また、教員との対話も充実し、地域との交流が出来上がり、学生生活がより充実したものになると思っております。これからの富山大学での学生生活が素晴らしいものになることを祈念し、式辞といたします。

令和3年4月8日
富山大学長 齋藤 滋